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日本対ブラジル

 北中米ワールドカップの日本対ブラジル戦を次男と観戦した。 前半はボール保持を放棄して逆襲を狙うプランがまんまとハマった。たとえサンドバッグにされているように見えても、1対0で勝っている事実はその状況を正当化する。ブラジル相手に主導権を渡して守り切ることは簡単ではない。全盛期のネイマールであれば、ドリブルで仕掛けて派手に転倒してフリーキックを獲得していただろう。幸いに今のブラジルにはネイマールのような小回りの利くドリブラーはいないし、ビニシウスは堂安と冨安に完封されていた。日本がボールを持つ時間帯もあったが、長くは続かなかった。ブラジルは日本のスリーバックにプレスをかけてきた。奪われたら大ピンチになるので、安全第一でロングボールを蹴ることになるのだが、そのロングボールのほとんどはブラジルに回収された。プレスを回避してブラジル陣内でボールを回しても、ブラジルの選手はボールをかっさらう技術に長けているために楔のパスが出せない。そんなこんなで日本が攻め込まれる展開で前半が終わった。 後半はサンドバッグ化が加速し、同点に追いつかれたことでボール保持を放棄する大義名分が崩れた。疲労を考慮してなのか堂安、鎌田、中村が交代すると、ボールを運ぶ人がいなくなり、守備一辺倒になる。終了間際に一点取られたが、延長の30分間タコ殴りにされることを考えると「これでよかった。これが実力だ」と思うようになった。 反省点を挙げると、後半のブラジルの配置転換に対応できなかったこと、ボールを保持する時間を長くして攻められる時間を減らすという思想が実現されなかったこと、前線の若手フォワードがチームにフィットしなくて出番がなかったことだ。得点力があって良いチームだったが、世界の壁は厚かった。日本代表は右肩上がりに強くなっているが、それは決して簡単なことではない。ワールドカップ優勝を目標として掲げることは「これからもサッカー人口を増やし、才能を発掘して、世界に送り出す」という日本サッカー協会の不退転の決意だと思っている。

韓国大統領のつぶやき

 北中米ワールドカップでの韓国の敗退を受け、韓国大統領がSNSで以下のようにつぶやいた。   https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/bca97bd6641eae4f57fe758547dc1350f3798d19 これは韓国代表監督であるホンミョンボ氏を無能呼ばわりするもので、「一国のトップがここまで個人攻撃するなんて!?」と衝撃を受けた次第だ。 選手時代のホンミョンボは「アジアの壁」と称賛される名選手で、文字通り日本の前に立ちはだかる存在だった。アジア予選を勝ち抜きワールドカップ出場が途絶えることがなかったのは彼の選手としての能力と主将としての統率力に依る部分が大きいと思う。今回のワールドカップでも、初戦は見事な逆転勝利、次戦は開催国メキシコ相手に互角の内容で惜敗、3戦目は油断して敗戦、グループリーグ突破の条件を計算し易い試合日程の国に上回られ敗退、という不運が重なっただけで、勝負事には予想内の出来事だ。そんな状況でかつての英雄が国全体からの非難を一身に受けていることに心を痛めている。 大統領が国民に代わって怒りを表明することで、ホンミョンボ氏への同情論が出てくることを意図してのつぶやきだったと信じたい。 追伸)今夜はいよいよブラジル戦だ。優勝候補に挙げられる、フランス、アルゼンチン、イングランド、ブラジル、スペインであれば、スウェーデンクラスの相手には余裕勝ちしていると思う。やはり、ワールドカップ優勝を本気で目指すというのは途方もない時間と伸び代が必要な大事業だと思う。アトランタ五輪でのマイアミの奇跡のようにジャイアントキリングが起こるのもサッカーの面白さの一つだ。当時と比べ両国の戦力差は縮まっているはずだ。前回大会のような幸運が訪れれば、奇跡とは呼ばれない勝ち方ができると思う。

夜の散歩道

 昨晩の19時、妻が「外は涼しいし快適だから外出しよう」と言い出した。俺にとっては「今さっき思いついたような突然の申し出」なのだが、妻にとっては「虎視眈々と外出に連れ出す機会を伺っている故の申し出」なのだ。妻の「蚊が出る季節の前に行こう」という勢いに押され、俺は「準備に時間がかかって出発が遅れ、同行する長男と次男から行く行く詐欺と言われそうだ」と思いつつも、渋々ゴーサインを出した。 長女は図書館で勉強中、三男は林間学校で不在、そんなわけで、俺、妻、長男、次男という珍しい組み合わせで20時40分に出発となった。アパート敷地の勝手口から出るのはいつもと同じ、今回はいつものコースを逆回りすることになった。 夜の外出は久しぶりだ。一昨年に救急車で搬送されて以来だ。車椅子に乗っての夜の外出は釜山に戻ってから初めてだ。久しぶりに月を見た。夜の街並みには昼とは異なる趣がある。産業道路を走る自動車の群れが発する光の流れは決して再現されないイルミネーションだ。古代人が現代に連れて来られたら、息を飲んで見入ってしまう光景であり、現代人であってもドバイに展示された有名アーティストの作品だと言われたら見入ってしまうと思う。歩いていると、「ここは千五百ウォンのコーヒー代で3時間勉強したハンバーガーチェーン店だ」とか「よく行ったあの店がパン屋に変わっているなあ」とか「この川の下の遊歩道を走っていたのに」とか「ここの鮟鱇鍋は激辛だったけど美味かった」という思い出に浸っていた。 妻は「長女とこの道を歩きながら色々なことを話すのよ」と言って、「楽しくて仕方ない」という様子で長男に話しかけていた。そんなとき次男ははるか前方を一人で歩いている。それは妻子を置いて一人で目的地まで行ってしまう20年前の俺の姿で、そのたびごとに妻から非難されたのだった。自宅に戻ったのは21時40分、やはり外出すると視覚と聴覚が刺激され、色々な考えが浮かんでくるものだ。

1分小説 11.5)NHKで7月23日20時15分から放送

 NHKの「編成王川島」で「1分小説バトル」の単独SPが7月23日に放送されると告知された。 https://www.web.nhk/tv/pl/series-tep-121W19R7QJ 今まで1分小説シリーズを本欄に投稿してきたが、この新番組が人気を博し文学の一分野を開拓するうねりとなることを願っている。ここはプロデューサーになったつもりで「1分小説バトル」の運営方法を提案してみる。 初回のインパクトが最も重要だ。俺狭間の戦いが織田信長の天下取りの魁となったように、初回のインパクトが最も重要、というか、全てと言っても過言ではない。それは視聴率ではなく、ヤフーニュースやSNSで話題になることが目標になる。Breaking Down の面白さは「イキがった不良が格闘家に身の程を知らされたり、番狂わせで格闘家が不良にKOされたりする」勝負論とお互いの生き様がぶつかる物語性にある。ここで提案したいのは「プライドが高そうな東大生と小説を書いているようなお笑い芸人の対決」だ。仕込みの段階で、「芸人風情に負けるわけないでしょ」という煽り文句を言わせて、芸人は「経験の差を思い知ることになる」と言って、余裕を見せる。二人のキャラが確立されたら、衆人監視の下で1分小説を書いてもらう。審査方法は、客観審査の結果を踏まえて4人のゲスト審査員の主観判定と視聴者投票の1票の合計で雌雄を決する。なお、客観審査は三段階から成り、校正のプロによる誤字脱字と文法チェック、小説の設定の矛盾点の洗い出し、有名作家2名による「作者等の事前情報を一切与えなず、優勢の度合いを百分率で表示する」ブラインド審査を基調とする同一声優による朗読を経て、主観判定を生中継で行えば視聴者投票も可能だ。勝負を決した後の悲喜こもごもと審査員のコメントを放送する。 対戦形式は様々で、「紙と筆記用具だけで、辞書や電子機器の使用が禁止される」ベアナックルルールや「AIの使用も二次創作も認める」何でも有りルールなど、対戦する二人の事情に合わせたルールでやればいい。ベアナックルルールは国語の基礎能力が露わになるので、客観審査でボロボロになることもあるだろう。そんな世代間の国語力の違いが見える対戦も話題になるだろう。東大対京大、早稲田対慶応、関東対関西、小学生対決、プロの作家対決、句会のように5名の参加者が自分の作品以外に優と良...

日本対スウェーデン

 北中米ワールドカップの日本対スウェーデンの試合を次男と観戦した。日本は引き分けでブラジルと当たり、負けても3位通過でブラジル戦を回避できる。スウェーデンは勝ったらブラジルと当たり、一点差で負けても3位通過が濃厚な雲行きだ。どうにもダチョウ倶楽部のコントのように「勝って2位通過だ!」「どうぞ、どうぞ」という展開になりそうだ。 前半の日本は、中盤でボール奪取できるし、スウェーデンのフォワード陣にも対応できていたし、前田の走力は脅威を与えていたし、中村の惜しいシュートもあり、決して悪い出来ではなかったが、もの足りないと感じた。「オランダに大量失点した守備ならもっと崩せるもっと一方的に保持できるはずだ」という思い込みと「モロッコ戦での内容が残っていた」ことがその原因だと思われる。アーセナルで活躍するストライカーを有するスウェーデンの攻撃にももの足りないと感じた。よく考えると「そもそもサッカーは守備側が有利な競技で、前半に見せ場が少ないのはよくあることだ」という結論に至った。 後半になると、日本の良さが凝縮された、何回も再生したくなるような、宝石のような、サッカー通の次男も叫び声を上げる、ゴールが生まれた。オランダ対チュニジアのスコアは2対1、追加点を挙げれば1位通過でブラジル戦回避が見えてくる。ここは一気に攻め込みたいところだ。「こんな時に三苫がいたらなあ。久保がいたらなあ」と思っていたら、エランガの、スウェーデンに活力を与える、日本の野望を打ち砕く、次男が「何じゃこりゃあ」と韓国語で唸る、同点弾が生まれた。その後、スウェーデンの猛攻が続き、危ない場面を作られる。鈴木がファインセーブするたびに「どうぞ、どうぞ」というセリフが頭に浮かんだ。「いかん、これはどっちが強いかを決める、プライドを賭けた戦いなんだ。勝てないまでも引き分けでミッションを終えねばならない。こんな時に遠藤がいたらなあ」と思っていると、ロスタイムに入り、ピンチもチャンスもなく試合が終わった。 決勝トーナメント一回戦は中3日でブラジルと対戦する。はっきり言って、今回は不利な材料が多すぎる。ブラジルは中4日で、エースであるビニシウスは絶好調だし、彼を守備する堂安、菅原、伊東は疲弊してしまったし、イタリアの名将アンチェロッティが指揮するブラジルの守備はスウェーデンよりはるかに強固で堅牢だし、日本は怪我人続...

韓国対南アフリカ

 北中米ワールドカップの韓国対南アフリカの試合を次男と観戦した。ちなみに我が家でサッカーに興味があるのは俺、次男、三男のみで、残りは代表戦が昼間に中継されていても見向きもしない。韓国は引き分け以上で2位通過、負けても3位通過の可能性が残っている。かく言う俺も以下のように予想していた。 https://hirasakajuku.blogspot.com/2026/06/blog-post_12.html 先発にソンフンミンがいないのが気になった。「不動のエースだと思っていたが、終盤の点が欲しい時に投入されるのだろう」と納得していた。前半は韓国が押し気味で、得点するのは時間の問題と思われた。南アフリカは攻撃が得意なチームで、時折リズムに乗ったパスワークで韓国陣内に攻め込んでいた。 後半は「このまま0対0で試合を終えれば決勝トーナメント進出だ」という韓国選手の声が聞こえて来そうな展開だった。韓国の攻撃は迫力を欠き、南アフリカの攻撃は喜びに溢れ、ついには結実する。スコアは0対1、このままだと韓国はA組3位になり、得失点差で生き残りが分かれる状況だ。そのために韓国は失点を怖れ、守備陣を攻撃に替える選手交替ができないように見えた。 俺と次男は同点ゴールを期待していたが、奇跡は起こらなかった。楽に勝てるし引き分けでも良いという油断が招いた敗戦だと思う。明日の日本対スウェーデンの試合も似たような状況だ。俺はブラジル戦を避けるために負けても構わないと書いたが、 https://hirasakajuku.blogspot.com/2026/06/blog-post_21.html 3位通過は対戦相手が2日後に確定する上に1位通過チームと当たる。移動の負担もある。何よりスウェーデン戦で負けて決勝トーナメント1回戦で負けたら目も当てられないではないか。前言撤回になるが、スウェーデン戦は全力で勝ちに行き、あわよくば1位通過を狙うべきだと思う。

元気になる秘訣

 昨日の午後、釜山大学数学科の卒業生であるLDS、HSH、KGY、CHI (敬称、略)が見舞いに来てくれた。ありがたいことである。 HSHの趣味は数独だ。数独とはパズルゲームの一種で、世界大会も開催されている。HSHは韓国代表選手で、今年の10月に開催されるインド大会に出場するそうだ。現在、交際中の女性と近々結婚するそうだ。数独という名称は「数字は独身に限る」というパズルのルールに由来している。HSHが結婚後も数独の鍛錬を続けるのか気になるところだ。 彼らとの歓談は長男と次男と妻を巻き込んで2時間半に及んだ。話題が途切れたら発言しようと準備していたが、盛り上げ上手な彼らの前では発言の機会は数回ほどだった。卒業生の話を聞いているだけで元気が出るものだ。また気楽に立ち寄ってほしい。 今日の午後2時に物理療法士のJSYさんが来られた。寝台に座った状態で施術することになった。ちなみにこの体勢で施術されるのは初めてだ。視点が上にある分自分の手足がよく見える。俺は「右手の爪が丸まって醜い限りだな」と思った。JSYさんは色々な質問をしてくれたが、まばたきでしか返せない自分がもどかしかった。保健所の在宅サービスは夏休みに入るそうで次回の訪問は9月以降だそうだ。 JSYさんの施術が佳境を迎えるとき、看護師のABYさんと物理療法士のKSHさんが来られた。妻から事前に聞いてはいたが、今日は施術のダブルヘッダーが行われる。「一日ずらして来てくれたらいいのに」と思ったが、日程調整が難しかったようだ。KSHさんの施術は心の中の悲鳴が出るほど痛いのだが、今日に限ってはへっちゃらだった。おそらく、ダブルヘッダーで関節がほぐれていたのだろう。KSHさんも驚いた表情を浮かべていた。 元気になった気がするのは気のせいだろうか?

7年前の記憶

北詰正顕先生は食道を切除した状態で以下の研究集会に参加された。 https://sites.google.com/view/2019symposium-algcombin 北詰先生は「睡眠時の逆流を防ぐために上半身の傾きを調整できる医療用ベッドが必要だ」と言っていた。「研究集会は長崎市内で開催されるのに、長崎市内にはそのようなベッドがあるホテルが見当たらなかった。そのために大村市内のホテルに泊まっている」と聞いた。それから2ヶ月後、病状が悪化して北詰先生は他界された。以下は闘病記からのシングルカットで、北詰先生の講演の様子が綴られている。  25年前、とある地方で開催された研究集会の懇親会終了後、一行は酔いを醒ますためかとある喫茶店に入った。学部4年生だった俺は「年長者が席を確保してから着席しよう」との思いから立っていたのだが、とある年配の先生から「座りなよ」と二人掛けのテーブルに招かれた。これがKZ先生との最初の出会いだった。 駆け出しだった俺は初対面の年長者を前にして、 「失礼なことを言わないようにしないと」 「しかし、黙っているのも気が利かないと思われそうだ」 とあれこれ考えたあげく、 「KZ先生の名字の漢字を考慮するとKDと書くべきなのでは?」 と会話の口火を切った。それが功を奏したというわけでもないだろうが、KZ先生の気さくなお人柄も相まって会話が途切れることなく時間が過ぎ去った。 その時から今まで、おそらく15回以上はKZ先生の講演を聴く機会に恵まれたが、そのほとんど全てにおいて有限単純群が頻繁に登場する。その一つ一つの説明が「単なる引用や紹介にとどまらない夥しい確認作業を経てこそ得られる知見」によってなされているのだ。万人が理解出来る道順を示す理想的な講演方式であるが、その説明によって理解までの道程が初心者にはあまりにも遠大で険しいことを知らしめられるのだ。そのような説明の連続で導き出される壮大な結果に圧倒され度肝を抜かれたのは俺だけではないはずだ。 上海で開催された研究集会で座長を務めた時、各講演後に質問したことに対してKZ先生からお褒めの言葉をいただいたことも記憶に新しい。そんなKZ先生と今日再会を果たした。それもそのはずで、長崎大学で開催中の代数的組合せ論シンポジウム中日の最終講演者がKZ先生なのである。 体調不良で午前の講演...

1分小説 11)「上海バス」( 646字、AI補正無し )

まだ六月だというのに、午前中だというのに、気温はぐんぐん上がり30度を超えている。石澤満男は自宅の縁側に座り、ただ中空を見つめている。三月末に希望退職して以来、ずっとそんな調子だ。満男は熱中症寸前までこの暑さと湿気にその身を委ねるつもりでいた。 満男は30年前に思いを馳せる。「あの頃、俺は上海にいた。赴任したばかりで土地勘がなく、営業先を周るのに苦労が絶えなかった。あの時も今日のような蒸し暑い日だった」 30年前の上海は大規模な百貨店が林立する通りの裏に洗濯物を干す貧民街が立ち並ぶというような混沌に満ちていた。満男は営業先でもらった情報に従ってバスに乗った。そのバスは冷房がなく、窓は全開だが、渋滞で速度が出ず風が吹くことがない。ねっとりとした逃れようがない都市熱が押し寄せてくるバスの中にいるのは不快そのものだ。加えて、新たな乗客が乗ってきて、日本の満員電車のような高密度になり、体臭と化粧の臭いが混じり合う最悪とも言える状況になった。満男自身も脇汗と背中汗が噴き出し、不快指数の上昇に一役かっていた。 「目的地まで半分も来てない。一体、いつまで耐えればいいのか?」と我慢の限界に達した時、風鈴の音色が聞こえた。いや、それは風鈴ではなく、おそらくは十代の少女の歌声だった。中国にそのような文化があるのか定かでないが、少なくとも満男はその高音の旋律に涼風を感じ、歌声がダイアモンドダストに変わりその気化熱で車内が冷却されると感じた。 信号待ちしていたバスは再び走り出す。少女の歌も終わる。拍手は誰からも起こらなかった。 満男は一時間以上縁側に座っている。見兼ねた妻が冷凍庫に入れて冷やしたタオルを満男の首に掛け、レモネードが載ったお盆を縁側に置いた。 満男は「谢谢」と言った。

日本対チュニジア

 北中米ワールドカップの日本対チュニジアの試合を観戦した。以下はその感想だ。 1)まるで強豪国のような試合運びだった。もちろん日本のことだ。以前であれば、「ハレの舞台を一瞬でも無駄にしたくない」という感じでシャカリキになって走っていたが、今日の試合では、無駄走りすることもなく、休むべきときは歩き、攻めさせて逆襲を狙い、その狙い通りに点を取り、相手に絶望感を与え、零封で試合を終え、ワールドカップという大舞台で日本の歴代得失点差の4対0を叩き出すなんて、文句の付けようがないパーフェクトゲームだった。 2)伊東が輝いていた。オランダ戦でも活躍したし、ワールドカップ後はビッグクラブに移籍しているかもしれない。3点目の相手守備を背中でブロックして冷静に流し込んだゴールには痺れた。上田もオランダリーグ得点王の実力を示した。ワールドカップでのゴールは世界中で何億回も再生される特別なものだと思う。4点目をアシストした佐野の走力も見事だった。1点目の中村のアシストもまた然り。鎌田のヒールシュートは意図的だったっぽい。攻撃陣は絶好調だ。とても怪我人が続出しているチームとは思えない。 3)オランダ対スウェーデンの試合が5対1と知って驚いた。スウェーデンと言ったらかつてはイブラヒモビッチがいた欧州の中堅国なのに、その国に大差で勝ってしまうオランダの強さは底知れない。ブラジルやモロッコもオランダは避けたいと思うだろうな。日本は3位以上が確定しているし、勝ち点4は決勝トーナメント進出の安全圏なので、次戦に負けてもメキシコと当たるから、メンバー総入れ替えで臨むのもありかもしれない。無理して2位以内を狙っても次はブラジルかモロッコなので頑張り甲斐が全くない。 4)冨安と板倉が元気そうなので安心した。そうするとオランダ戦で谷口と渡辺が先発だった理由が気になる。森保監督はどちらがベストだと考えているのだろうか? 4)堂安は守備で頑張っていた。伊藤も体を張ってロングボールを跳ね返していた。GKの鈴木、DFの鈴木、MFの鈴木、これからの代表の中核になるかもしれない。とにかく、出場した全員が良かった。 後記)3位通過の場合、メキシコと当たるかもしれないが、他の組の1位通過国との対戦もあり得る。ブラジルはビニシウスがヤバすぎる。本気のブラジルに勝てるとは思えない。2位通過は避けた方が賢明。

遅れた追悼文

 昨年、小関道夫先生が他界された。何度もお会いして自宅にも招かれたのに訃報を知ったのはつい最近のことだった。追悼のための研究集会も開催されたが、 https://sites.google.com/view/alcom2026 機を逃した感から何の追悼文も残せなかった。 俺が学生だった時、場所は忘れたが日本のどこかで研究集会もしくは談話会があった。道案内をした記憶がかすかにあるのでその場所は福岡かもしれない。初日の行事終了後、来客全員引き連れて夕食の案内をするのが通例だった。中心街で飲み食いし、ほろ酔い気分で二次会の店に移動中、学生と教員合わせて十数名の数学者の集団はぽん引きに出くわす。ぽん引きとは路上で「一時間二千円ポッキリ」などとセールストークで店に連れ込む人たちのことだ。数学者はそんなセールストークを鵜呑みにする人種ではない。誰もが無視して通り過ぎようとする。俺もあんまりしつこい場合は代表して毅然と断る心の準備をしていた。「大体、キャバクラとか行くわけないだろ。相手を見て声掛けしろよ」と思っていたら、小関先生がそのぽん引きに「僕はもう枯れちゃったからねえ」と微笑みながら言った。それを聞いた瞬間、「なんて粋な切り返しなんだ!と驚愕した。俺は決して交わることのない対極の位置にいる人種という偏見を抱いていたが、小関先生にとってはぽん引きも数学者も同じなのだ。そんな博愛的目線が自然に出るところが皆から慕われる理由なのだ。 小関先生が亡くなって最も悲しんでいるのは小関夫人に他ならない。俺の妻は、台湾での中華グルメツアーに同行したり、名前入りの集合写真をもらったり、パウンドケーキのレシピを教えてもらったり、俺がALSに罹患したとき電話で励まされたり、小関夫人と交流してきた。俺も小関先生の自宅に招かれ、小関夫人の手料理フルコースをご馳走になった。そのどれもが美味しくて、いつかまた食べたい、あるいは妻の手料理でもてなしたいと思っていた。前者は叶わぬ夢となったが、後者は条件が整えば可能だ。なんとかして小関夫人を元気付けたい。それが小関先生の供養になると信じたい。 小関先生、だいぶ遅くなりましたが、この場を借りて追悼させてください。今まで本当にありがとうございました。小関先生の背中から色んなことを学びました。今はただ安らかにお眠りください。

アルゼンチン対アルジェリア

 北中米ワールドカップのアルゼンチン対アルジェリアの試合を観戦した。メッシが出場している。メッシにボールが渡るとそれだけで大歓声が上がる。メッシはサッカー界のレジェンドで、前回のカタール大会での大活躍は忘れられない記憶として人々の心に刻み込まれている。あれで引退してもおかしくない年齢とタイミングなのに、その四年後メッシはワールドカップの舞台に戻ってきた。俺は「名刀の切れ味が垣間見えれば満足だ。動けなくても周りがなんとかしてくれる。メッシがそこにいるだけで幸せな気持ちになる」とパンダを見るつもりで観戦していた。 アルゼンチンのサッカーを一言で表現すると「優雅」が最もぴったりくる。全員が優れた戦術眼と技術を持ち、即興でパスを繋ぐように見えるも俯瞰して見ると実に合理的なパス回しに見えるからだ。対するアルジェリアは自分の無知が恥ずかしくなるほど好感度の高いサッカーをしていた。前線の選手は突破力があり、番狂わせの雰囲気を醸し出していた。 前半にメッシがGKと1対1になり、あっさりネットを揺らした。それはオフサイドだったが、「さすがはメッシ、ゴール前での冷静さは健在だ。年老いても決定力は衰えてない」という認識に変わった。アルジェリアもネットを揺らしたが、これもオフサイドだった。アルゼンチンが押し気味の展開でアルジェリア守備陣の密度が高い場所でメッシへのスルーパスが通る。メッシは左足を一閃、その弾道はかつて憧れ真似しようと思ったものだった。 https://hirasakajuku.blogspot.com/2026/03/3_25.html 普通の選手であれば力んで宇宙開発かGKの正面が関の山だろう。しかし、歓喜の輪の中心にいる男は全盛期と遜色ないシュートを撃つメッシなのだ。俺はパンダ扱いしていた自分の無知を深く恥じた。 後半にメッシは2つのゴールを挙げてハットトリックを達成した。全世界が注目するワールドカップの舞台で弱小国ではない好チームであるアルジェリア相手に、である。全盛期を超える活躍をするメッシから目を離すべからず。

吊り目ポーズ

 吊り目ポーズが差別的だと問題になっている。 https://news.yahoo.co.jp/articles/cf910fe34f1c4d1478d08ec172a01c44ce9a3c19 俺も経験した。エジプトの集落を訪問した時、そこの子供たちが一斉に吊り目ポーズをして迎えてくれた。ちなみに俺の目は糸のように細い。近視用の眼鏡をかけているので、実際より小さく見える。そのポーズを見るのは初めてだったので、「顔真似しているんだろうな」くらいに思っていた。そのポーズが差別的だと報道されているのを知ったのはほんの十数年前のことだ。しかし、俺はエジプトで会った子供たちの行動が差別的だとは思ってない。子供が言葉や行動や容姿を真似するのはよくあることだし、そのような真似は親しみからくるものが大半だからだ。仮に人種差別的意図があったとしても、それを声高に糾弾すると「目が細いほど醜い」ということを暗に認めていることになり、抵抗感がある。 俺が目を上下に開くポーズをしても非モンゴル系人種が怒り狂ったりしないし、人種差別だという声も上がらないだろう。その開く方向が左右になるだけで差別主義者と認定されるのもおかしな話だと思う。その一方で、人種差別の記号として無邪気を装って意図的に吊り目ポーズをする人もいるだろうし、それを見て嫌な気持ちになった人もいるだろうし、個々の事例に対して差別的か否かを判断する客観的基準もないだろうから現在のような「吊り目ポーズ一律禁止」みたいな論調が生まれたと想像する。 上記の記事のメキシコ人は公式に謝罪したのに会長職を解任されたそうだ。詳しい事情が不明な状況で何か言うことは控える。

日本対オランダ

北中米ワールドカップの日本対オランダの試合を観戦した。その前日、妻に「4時50分にアラームをセットして」等の協力をお願いするメッセージを送った。ありがたいことに妻は一緒に観戦することを申し出た。ちなみに妻はスポーツに全く興味がない。妻の申し出は「眠りに落ちて俺からのSOSを聞き逃すことはあってはならない」という配慮に依るものだ。試合開始時間になると、何も知らせてなかったのにも関わらず次男がやって来てテレビを見始めた。それを確認した妻は再び眠りについた。海外組が出場する日本代表の試合の生中継を視聴するのはアジアカップのイラン戦以来だ。以下はその感想だ。 1)遠藤に替わって新キャプテンになった板倉が先発メンバーでない理由が気になった。守備の最終ラインはスリーバックで、左から伊藤、谷口、渡辺が並ぶ。富安が先発メンバーでない理由も気になった。ボランチは佐野と鎌田、「森保監督、強気だな」と思った。オランダはガクポを中心に攻撃を組み立てる。オランダ人は背が高い。ゴール前にクロスが上がるとひやひやする。日本は遅攻でもパスワークでチャンスを作っていた。両チームの攻撃の特色が出ている噛み合う試合で、見ていて楽しく時間が過ぎるのが早かった。 2)後半になって、オランダのギアが上がったように感じた。日本は守備に追われて攻撃に移れない。オランダの先制点はそれまで耐えてきたスリーバックの自信を粉々に砕く一撃だった。と思っていたのは俺だけで、当の選手たちはそうではなかったようだ。中村の見事な股抜きシュートで同点に追いつく。「それならこちらも」という声が聞こえてきそうなミドルシュートを食らって、勝ち越された。「このまま格の違いを見せつけられて終わるのか」と諦めの境地に突入していたが、オランダはボール保持を日本に渡し守り切る作戦に出る。交替で入った伊東が攻撃を活性化して「もしかしたら」という雰囲気が漂い始める。そのまま点が取れずに敗戦というのは日韓ワールドカップのトルコ戦以来何度も経験してきた。仮にここで負けてもその経験が一個増えるだけだ。伊東がコーナーキックを蹴ってもオランダの高さに跳ね返されるだけだと思っていたら、カープがかかった弾道はオレンジの壁をかすめ小川の頭にクリーンヒットした。 3)またしても森保采配大当たり。その一方でオランダのクーマン監督は守備一辺倒になったことを批判されるだろう。...

 俺は21時から始まるNHKのニュースをほぼ毎回視聴している。今週の平日は例外なく冒頭から10分以上の枠を使って「熊」のニュースを流していた。主役は宇都宮に出没した熊だ。工場敷地内を駆け回る、小川を泳いでフェンスをよじ上る、麻酔銃を射たれ眠っている熊を五人がかりで運ぶ、休校が明けても車で送迎しようとして渋滞している、映像を繰り返し見せられた。 これはある種の偏向報道だと思う。熊のニュースは「こんな街中に熊が出るんだ!」という驚きと「目の前に熊が出てきたらどうしよう?」という畏怖と「熊も生きるために必死なんだ」という動物愛護の気持ちが入り混じって興味をそそられるが、全国放送の60分ニュース番組の冒頭で10分以上の枠を割くほどの重要性があるとは到底思えない。 中東情勢や国会での議論やAIの動向や各種の犯罪などの国民に知らせるべきことは山ほどあるはずなのに、肝心なことには触れないで天候や物価やナフサや熊でお茶を濁しているように感じるのは俺だけだろうか? 以前から9時台のNHKニュースの密度の低さに疑念を抱いていたが、その疑念が溜まりに溜まって今回の熊報道で決壊してしまった。同じNHKの「国際報道2026」や朝7時のニュース番組に倣って終盤で今日のニュース一覧を読み上げるだけでニュースの密度は高くなるだろう。とにかく、21時のニュース番組は内容を改編して、「これだけ見れば一日の主要ニュースがわかる」という他のニュース番組の模範となってほしい。 追伸)月曜日午前5時に日本対オランダの試合が始まる。オランダでは21時、日本では会社や学校に行く前の時間帯、双方の視聴環境を考慮して決まったキックオフ時間だと想像する。この試合の予想は難しい。日本の大勝から大敗まであり得るからだ。遠藤の離脱は痛すぎる。それでも板倉と瀬古のような代替する選手がいて戦力が落ちないのが日本の強味だ。三苫の不在も中村と伊東が埋めるだろうし、伊東の右サイドは堂安が埋めるだろう。

NBAファイナルゲーム4

 昨日のNBAファイナルゲーム4はニックスが29点差を跳ね返す逆転勝利を挙げた。スパーズを応援していたので、試合終了後は茫然自失で戦評を書く気になれなかった。一日経った今その試合を振り返ると、「歴史的大逆転を生中継で視聴できてよかった」と思うようになった。言っても栓ないことだが、健康だった頃は平日の午前中にテレビ観戦とかありえないし、考えもしなかった。今回の観戦は俺がALSに罹患したから実現したとも言える。以下はスパーズのファン目線で見た感想だ。 1)開始早々。、ニックスのビッグマンでありウェンビーの天敵であるタウンズがファウルトラブルでベンチに下がる。これを機にウェンビーが得点を重ね、チームリーダーの活躍が呼び水となりガード陣のスリーが高確率で決まりまくる。水も漏らさぬ守備でニックスを抑え込み、点差を広げていく。俺は「ゲーム3での接戦をものにしたことでニックスの爆発力の上限が見えたのだろう。今回は余裕勝ちして、実力差を誇示しよう。緊張感のない後半戦を見るのも悪くない」とスパーズ優勝の皮算用をしていた。 2)後半に入ると雰囲気が一変した。あれほど決まっていたスパーズのシュートがことごとく入らなくなった。「勝負は決まった」と油断しているようにも見えた。フォックスの2回連続パスミスやウェンビーの2回連続スリーポイントシュートミスはその証左だ。一方のニックスはブランソンの巧みなゲームメイクでジリジリと点差を詰めていく。不穏な空気はスパーズ全体に伝染し、水も漏らさぬ守備が損切りできないでスリーを決められる守備に変容していた。 3)残り7秒の場面でのフォックスの判断ミスが批判されているが、あれはレイアップできる位置でバスケ選手の本能が作用したのかもしれないし、NBAファイナルという舞台が判断を狂わせたのかもしれない。若い選手が多いスパーズにおいてチームに落ち着きを与える役割のフォックスは欠かせない存在だ。ミスを帳消しにする機会は三試合残っているぞと伝えたい。 追伸)北中米ワールドカップが開幕した。午前11時から韓国とチェコの試合を観戦した。チェコがセットプレイで先制するも、それまで有利に進めてきた韓国が追いつくだろうと予想していた。俺の予想は半分当たった。ファンインボムの美しい同点ゴールが決まった。その10分後、オヒョンギュが勝ち越しゴールを決めた。韓国は欧州の中堅国...

前歯と奥歯

 今日の午後、歯科医師のKKS先生と助手のASYさんが来られた。前回の訪問の様子は以下を参照。 https://hirasakajuku.blogspot.com/2026/03/blog-post_11.html KKS先生は開口一番「試作品を作ってみたよ」と言った。それは歯ぎしりで警告音が出るセンサーだ。「まさか本当に作ってくるなんて!」と大いに驚いた。KKS先生は「歯ぎしりは右の奥歯でするの?」と尋ねた。俺は「前歯です」と妻を介して答えた。KKS先生は「奥歯でしか実験してなかったけど前歯でもうまくいくかもしれない」と言って、前歯での試行錯誤が始まった。俺は「歯ぎしりは前歯だけど、奥歯で試行錯誤すればいいのに」と思っていたが、そのことを表現する術がなかった。 前歯にセンサーを当て噛んでみても、音は鳴らない。どうやら接地面積が小さいのが原因らしい。何度やっても失敗続きだったので、とうとう奥歯での実験が始まった。 奥歯での一回目の実験で「ブー」という音が出た。しかも、普段の噛み合わせで偶然歯がぶつかっても音は出ず、意志を込めて噛み締めた時だけ音が出るような絶妙な匙加減に調整されていた。俺は「これを作った人は天才だ。今すぐ使えるほどだ」と思った。KKS先生はセンサーを覆うビニールカバーの耐久性を言及し、改善の余地を訴えた。 俺は「そうなのだ。突然、音が鳴らなくなる状況を考えたら怖くて使えたものではない。医療工業製品を開発する作業は一朝一夕にできるものではなく、その背後には膨大な試行錯誤と実験が潜んでいるんだ」と思った。そして無償のボランティアで時間を費やしているKKS先生に敬意と感謝が湧いてきた。 追伸)その後、看護師のJKJさんと物理療法士のKSHさんが来られた。血圧測定が終わると妻は二人にレモネードを振る舞い、JKJさんは別室で妻と相談、KSHさんは寝室で俺の四肢を施術、という状況になった。KSHさんは「昔、ボクシングをやっていた」などの身の上を話し、俺に「何か運動やってた?」と尋ね、まばたきで「うん」としか言えない俺に「ボクシング、剣道、…、…」と聞いてくれたが、最後まで柔道は出てこなかった。来週も来られるそうだから、ボクシングの話を詳しく教えてもらいたい。

1分小説 10)「暇つぶし三昧」(560字、AI補正無し )

 バックパッカー歴5年の島野はシカゴ市内の某大手 ハンバーガーチェーン店にいた。 「通常メニュー販売開始まであと15分か。店内で待っても文句は言われないだろう」と考え、テーブル席で安宿を探すために地図を広げていた。島野は「旅行中はスマホを持たない」という先輩からの教えを実践していた。 間もなくして、冷蔵庫のような体格をヒップホップ風のファッションで包んだ男と、漫画「ワンピース」に出てきそうな豊満なバストをタンクトップで隠した感のある女が、無言で相席して来た。島野は下ろしたバックパックの背帯に右足を通し、笑顔で二人を迎えた。女は 「何やってんの?」と島野に尋ねた。 「シカゴで一泊しようと思ってたんだが、高過ぎるからグレイハウンドに乗って移動するつもりなんだ」と島野が言うと、男は地図上の通りを指差した。女は 「この通りに安宿があるんだって。どうする?」と聞いてきた。島野は 「思っていたよりいい人なのかもしれない。ここは曖昧な返事でやり過ごすのがいいだろう」と思い、 「午後に訪ねてみるよ。ありがとう」と答えた。即座に女は 「今、ありがとうと言ったな。20ドルよこしな。あたいはマジなんだ」と顔を近づけすごんだ。島野はポケットに手を入れ、世界各国の紙幣を取り出し、 「これで勘弁してくれよ」と言った。女は更に声色を変え、 「ふざけんな。あたいはプロスティチュートなんだ。今すぐそのホテルに行って払ってもらってもいいんだよ」と言った。男はバンダレイシウバのように両手の指を交互に組み合わせ回転させていた。島野は顔面蒼白になり、逃げる方法を必死になって考えていた。その瞬間、店内アナウンスが流れ、二人はスマホで予約したハンバーガーセットを受け取りにカウンターへ向かった。男は島野に聞こえるような大きな声で 「姉ちゃん、名演技だったぜ」と言った。

酒類概論

朝ドラ「マッサン」の再放送を見ていたら、以前に飲んでいたウィスキーの香りと味わいが蘇ってきた。アイスピックで砕いた氷の破片をグラスに入れ、その上からボトルを傾けると琥珀色の液体が流れ出し、氷と触れるとパチという音が鳴る。氷が溶けてまろやかな味に生まれ変わる様は心象風景そのもので、未成年には禁止されている飲酒の罪悪感を和らげる役割を果たす。ちなみに韓国のキリスト教徒は飲酒を禁じられているので、「以前」というのは「俺が教会に通うようになる前」という意味だ。 「ちょっと待ってくれ。キリストも葡萄酒を飲んでいるではないか。なんで韓国では禁止なの?」という疑問が生じる方もいるだろう。俺もよくわからないのだが、それは「もし飲酒が容認されたら教会内の秩序を保つことが困難になる」という自制が作用しての取り決めのようだ。ただし、教会外のコミュニティでは飲酒しても教会内では飲酒の話は一切しないという使い分けをしている人もいる。 九州という土地柄、貧乏学生には美味い日本酒を飲む機会に恵まれなかった。二日酔いになりにくい、尚且つ財布にも優しい焼酎が専らだった。もちろん、「最初はビール」で、どんな食事にも合い、炭酸がのどを刺激し、乾杯しやすく、気分もアガるビールは俺の飲酒量の9割を占める存在だ。しかし、味が好きと言うよりは「皆が飲むから飲む」という雰囲気が好きだった。焼酎は「キリッとした味わいが好き」だとは思ってはいてもビールと同様に雰囲気先行は否めない。日本酒は大吟醸の冷酒は格別の美味しさだと思うが、あまりにもサンプル数が少ないので批評できない。ワインも同様で、ヨーロッパでワインを飲んだ時はその雰囲気に酔い、大いにかぶれたが、日韓では食事との兼ね合いでワインを飲む機会はほとんどなかった。 総合的に見て、香りも味も好みなのはウィスキーのような気がする。しかし、ブランデーとの違いもよくわからないしなあ。

NBAファイナルゲーム2を視聴した

 NBAファイナルゲーム2の生中継を視聴した。以下はその感想だ。 1)ニックスのエースであるブランソンは試合全体で見るとシュートミスが多い。しかし、勝負処での決定力は特筆すべきものがある。今日も最終盤で守備のリーチを越える高いアーチのシュートを決め、ニックスを勝利に導いた。彼にマッチアップするスパーズのキャッスルとハーバーは守備力が高く、ブランソンの自由を奪うと予想していたが、今日に限って言えば、格の違いを見せつけていた。その二人と比べると、ブランソンの試合の流れを読んだゲームメイクが光った。 2)スパーズは西地区決勝の激闘で燃え尽きてしまったという印象だ。サンダーとの戦いで見せた集中力を発揮していたらファイナルでも大差で連勝していたと思う。今日の試合でも守備が後追いになる場面が多く、ニックスのシューターに自由を与えていた。最後のウェンビーのシュートミスは仕方ない。今回のようにチームの勝敗を託される選手はウェンビーで、見ている人も納得したと想像する。そのような経験を積むことでスーパースターから真のスーパースターへの階段を上っていくのだろう。 3)スパーズの若さゆえの爆発力をニックスの柔らかな老練の技術で受け流しているという印象だった。タウンズの守備を欺く身のこなしと意表を突くシュートを見ているとバスケの奥深さを感じる。ゲーム3とゲーム4はニックスのホームコートであるマジソンスクエアガーデンで開催される。普通に考えたらニックスの四連勝でファイナルが終わってしまいそうだ。しかし、スパーズが一勝でも上げればシリーズの流れが大きく変わる可能性は高いと予想する。次戦も目が離せない。 追伸)昨日の午後、物理療法士のJSYさんが来られた。一昨日のKSHさんは個人病院の所属で、JSYさんは保健所に所属している。俺の右の手の指は5本とも関節が曲がってグーの状態で固まっている。昨日の施術は指を伸ばすのに時間が費やされた。アイコンタクトと思いJSYさんの顔を見ていたら妻が「若い女性を見つめるのはよくない」と突っ込みを入れ、それ以降の目のやり場に困り、目を閉じることにした。するとマッサージの心地良さと相まって眠気に包まれた。

四分の一の施術

 今日の午後、物理療法士のKSHさんが来られた。いつもは四肢のマッサージをしてくれるのだが、今回は左腕だけだった。その理由は「今回は定期検診ではないから」とのことだ。しかも、この後、7つの訪問先があるそうだ。 左脇のリンパ腺マッサージが気持ち良かった。マッサージが終わってから看護士のJKJさんが来られた。妻に頼んで先週の訪問看護の記事を読んでもらった。 https://hirasakajuku.blogspot.com/2026/05/blog-post_29.html JKJさんは自分のことが書かれていないことに不満を漏らした。その不満は社交辞令だとは思うが、血圧測定だけでは話が広がっていかないことが書けなかった理由だ。次回は自己紹介をしてもらう予定なので、セルフプロデュースの準備を願いたい。 現在、妻は昼寝している。すやすやと寝息を立てている。前日の家事で25時過ぎに就寝して5時に起床して長女への弁当を作っていたからだ。長女は浪人生で、今日は本番と同じ日程で進行する模擬試験が実施される。夜中に起こす立場上白々しく聞こえるかもしれないが、俺は妻に十分な睡眠時間を確保してほしいと切望している。

ロンバケを視聴した

 1996年に放送されたドラマ「ロングバケーション」をNetflix で視聴した。視聴率30%超えの超人気ドラマだったそうだが、全く知らなかった。月曜日の21時から放送されたそうだが、当時はその時間帯に自宅アパートにいることは稀だった。以下はその感想だ。 1)留守番電話、チビT、室内喫煙、夜道を恐れない中学生(広末涼子)、自転車に二人乗り、デジタルでないカメラ、液晶でないモニター、に時代を感じた。 2)木村拓哉は常識的なことしか言わない二枚目の役柄、山口智子は婚期を逃した三枚目の役柄、演技の難易度は圧倒的に後者が高い。木村拓哉はハンサムだから普通にやっているだけで好感度が上がる。ピアニストに見えない弾き方でも「アイドルだから忙しいんだろ」で許される。山口智子は打たれ強いサバサバした元モデルを演じ、尚且つ7歳年下の木村拓哉とお似合いのカップルになるという説得力が求められる。この難しい役柄は山口智子という、長身でスタイルも良く愛嬌のある童顔で、コミカルな演技ができる女優だからこそ成し得たものと思う。晩婚化への過渡期である当時には彼女のような境遇の女性が多かったのだろう。そんな女性たちに支持され、共感されたことが高視聴率の一因だと思う。 3)南(山口智子)は自身の結婚式当日に新郎からドタキャンされる。誕生日の午前0時に電話がかかってくる思い出を引きずるほど親密だった新郎は最後まで登場しなかった。その気になれば、詐欺罪の被害を警察に訴え居所を突き止めることもできたはずだ。その未練を清算してこそ次の恋に移れると思うのだが、ドラマではその伏線は回収されなかった。ドタキャンはファンタジーとしておくのも構わないが、視聴者を唸らせるような結末が見れなかったのは残念だった。 4)南が杉崎に告白されたとき、「先輩でお姉さんでいることに疲れた」みたいなことを言ったが、なぜか南に感情移入して、その演技に感動してしまった。杉崎が最後まで南に誠実な態度を崩さない脚本も良かった。 5)あれだけ練習もせずに「誰かのためにピアノを弾く」と意識を変えるだけで優秀賞を受賞できるのは瀬名(木村拓哉)の才能によるものだろう。もちろん皮肉だが、才能の片鱗を見せる場面を挿入するなどの説得力が欲しかった。「あれでボストンフィルに入団できるのか?」と憤る音大生は少なくないと想像する。