映画「Mommy」の感想
映画「Mommy」を鑑賞した。この映画は和歌山カレー事件を扱ったドキュメンタリーだ。この事件が起きたのは1998年7月だ。その頃、俺はドイツかイスラエルにいた。日本のニュースはインターネットで閲覧することができたので、事件名は記憶しているがその詳細を気に留めることはなかった。以下はその感想である(ネタバレ注意)。 1)海の青と空の青との対比、地面に置かれた花束、道路を真上から撮影したときの意外性、被害者の遺族が手を合わせ祈っているときにシャッター音を響かせるマスコミの無神経さ、序盤から観客を惹きつける映像美とカメラアングルが秀逸だった。 2)林容疑者の手紙の朗読者はまさか本人ではないだろうが、本人の雰囲気を醸し出していた。本作には引用映像と役者が演じている部分が混在していて、境界線を意識することを促す構成になっている。 3)夫の林健治氏が主役だった。「こんなこと話していいのか」というくらい保険金のことを語っていた。長男の方は「結婚は諦めているし、子供も作るつもりはない」と言っていた。長女の方は事件を隠して家庭を持つが娘と心中してしまった。そのことを冷静に客観視する長男は吹っ切れているのかなと思う一方で映画には現れない心の闇があるかもしれないと思った。 4)学者の鑑定は当てにならないと思った。カレー鍋に残っていたヒ素と容疑者の自宅にあったものの成分が一致するかどうかで二人の学者の見解が分かれた。どっちが正しいのか一般人には判別できないだろうな。 5)映画の中で度々監督が登場する。アポ無し玄関突撃取材や道行く人にインタビューする場面があったが、被取材者はあからさまに嫌そうな顔をしていて、大変な作業だと思った。インタビューするだけではなく映画の出演交渉もしなきゃいけない。 6)真相はわからない。判断材料を提供して結論を強要しないのがこの映画の良さだと思う。