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帰って来た長い夜

 昨日の夕方、妻が体調不良を訴え、ベッドで寝ていた。一眠りすれば直るだろうと思っていたが、2時間、3時間と眠り続け、次男に店屋物を頼むように指示して、俺の夕食を作ることを諦めて、次男に胃瘻から栄養剤を注入するように命じた。 俺は23時半に就寝した。胃に違和感があったが、「液体である栄養剤で胃もたれすることはないだろう。一眠りすれば違和感も解消するはずだ」と思い、実際に1時間ほど眠った。しかし、その違和感は増幅し、そこから長い夜が始まった。胃の中は胃液しかないはずなのに、軽い吐き気に襲われる。眠りたいし、眠気も来ているのに、吐き気のために眠れない。頼みの妻は熟睡中で、「慢性的な睡眠不足が原因かも」と言っていたので起こせない。そうやって悶々としていると目が冴えて来て、覚醒してしまった。窓の外はまだ暗い。他のことを想像して気を紛らわせようとするが、結局は吐き気に戻る堂々巡りが繰り返される。外からは鳥の鳴き声が聞こえる。 そうしていると、妻の寝息が聞こえなくなった。「夕方から8時間以上寝ているから自然と起きる時間になったのかも」と思い、アヒルを鳴らして「ピー」という音を響かせた。妻は微動だにしなかった。代わりにやってきたのは次男だった。なんでも「暑くて目が覚めた」そうだ。用を足すと緊張がほぐれるものだ。俺は1時間眠ることができた。しかし、違和感は解消しないままだ。俺は背中への圧迫感に耐えられなくなりアヒルを鳴らした。妻は眠そうな顔で「昨日より良くなっているけど、まだ頭痛が残っている」と言った。妻は俺を座らせ、その態勢で2時間眠ることができた。 時刻は9時半、ようやく違和感が消えた。俺は妻の体調が回復傾向にあるのを喜び、長い夜の終わりに安堵し、家族の介護のおかげで生きていることを再認識した。

北中米ワールドカップを総括してみた

 北中米ワールドカップを総括してみた。 1)テロ、サポーターの衝突、群集事故による死傷者は皆無だった。俺が知らないだけで本当は犠牲者がいたのかもしれないが、マスコミが大々的に報道するような事件は起きなかった。当たり前のことと思いがちだが、開催国は「ワールドカップが安全に運営された」という事実を誇っていいし、マスコミもその事実をポジティブに報道して開催国への感謝を伝えるべきだと思う。そのことに比べたらトランプ大統領の表彰台問題など取るに足らないことに思えてしまう。 2)東西に長い地形を生かして多様な時間帯での試合が組まれ、出場国拡大に伴う試合数の増加に対応していた。自国の試合と放送時間が生活リズムに適合する他国の試合を視聴していたので、俺にとっては出場国拡大は気にならなかった。グループリーグは確かに緩くなったような気がする。日本も28ケ国から32ケ国に拡大した恩恵で初出場を果たした。それが契機になってサッカー人気が定着した。このようにサッカーの全世界的普及という観点から出場国拡大の流れは続きそうだ。サッカーはワールドカップ常連国が所有物ではないのだ。 3)48分の試合時間を3時間に拡大して魅せるNBAに慣れている俺には給水タイムの導入などの商業化は些細なことだ。ハーフタイムのCMは見てない人が多いが、給水タイムの1分間に席を立つ人は少ないと思う。その分宣伝効果は大きくなり、スポンサー料も高騰する。伝統を守る立場の人は給水タイムを非難するが、俺はこの程度なら我慢できる。もうすでにサッカーは商業化されているし、今更、20世紀の時代には戻れないし、FIFAのせいにして各国リーグでも給水タイムが導入されると予想する。 4)VARの導入は「ユニフォームを引っ張る、PA内でワザと転倒する」等の審判を欺くプレイを減少させたし、誤審も減ったと思う。しかし、今大会でも見られたように「どの場面まで遡ってVARを適用するのか?」や「いつVARが発動するのか?」が曖昧だった。 5)FIFA会長は「それはちょっと受け入れられないし、あなたの名声にも傷が付く」と断ることもできただろうに、何かの弱味を握られていたのか脅されていたのか開催国大統領の頼みを聞く見返りがあったのか定かではないが、出場停止の選手を出場できるように計らって物議を醸した。両者が現職を引退してからあの時の真実を語ってほし...

スペイン対アルゼンチン

 北中米ワールドカップのスペイン対アルゼンチンの決勝戦を次男と観戦した。 前後半のアルゼンチンのシュート数は0だ。スペインはハーフライン付近でボール狩りの網を張り、オルモやオヤルサバルが組織的かつ献身的に追い込むことでアルゼンチンのパスコースを限定し、左右どちらかに追いやり、ビルドアップを諦めさせ、GKへのバックパスか苦し紛れのロングボールを蹴らせていた。そのためにアルゼンチンはハーフラインを越えることも容易ではなかったし、たまにハーフラインを越えても更なる圧迫を受けて、クロスを供給するサイドの選手にさえボールが渡らない、という状況が続いた。スペインは中盤を支配して、いくつかの決定機を作るが、そのシュートはヘロヘロで、アルゼンチン側は「支配されている割には決定機は少ないし、失点する気配がない。このまま時が経つのを待つのも悪くない」と考え、スペイン側は「支配しているものの、逆襲のリスクは常にあるし、メッシの存在は無視できない。ここは前がかりにならず、現状維持でいい」と考え、その均衡点がシュート数0でスコアレスで延長戦に突入という展開を導いたと思えてならない。 エンソが退場してからは尚更その傾向が強くなった。アルゼンチンを支えていたのは「このまま0対0を維持してPK戦で勝つ」という希望であり、主導権を放棄して守りを固めるだけだった。スペインはトーレスとニコを投入し攻撃を活性化させる。この采配が功を奏し、ニコのゴールが生まれた。と思ったが、反則があったとして認められない。この場面はVARも発動しなかった。その後、ニコの折り返しをトーレスが決めてスペインが優勝したから問題にならなかったが、もしアルゼンチンが優勝していたら、後々まで語り継がれる疑惑になっていたと思う。 メッシのCKからのシメオネのシュートは残念だった。ラウタロを投入してほしかった。メッシにはマラドーナの5人抜きのような伝説を残してほしかった。ヤマルのワールドカップでの得点は一点、メッシの後継者と言うには物足りない数字だ。ニコが活躍して嬉しい。このスペインに日本はどうやって勝ったんだ?次男はため息をついて落胆している。 もうワールドカップも終わりか。楽しかったなあ。

イングランド対フランス

 北中米ワールドカップのイングランド対フランスの試合を次男と観戦した。この試合は準決勝で敗退した2チームが3位を争う試合だ。優勝を目指して準決勝で全力を出し尽くした選手たちにとっては罰ゲームに等しい試合で、できればやりたくない試合だ。しかし、観客がいる以上、全力で戦うのがプロなわけで、得点王争いもあるし、歴史的に戦争を繰り返した両国だし、控え選手に活躍の場を与える意味もある。普段は観戦しない3位決定戦だが、今回のキックオフ時間が午前6時ということで観戦を決意した次第だ。 一言で言うと、楽しい試合だった。両チームが勝敗にこだわってないので、守備が淡白で、その分攻撃陣は広いスペースでのびのびとプレイしていた。アーセナル所属の選手であるライスやサカが得点したのも嬉しかったし、ベリンガムの超絶ゴールも見れたし、スペンスの守備力と走力にも感嘆した。エムバペの2ゴールも見れたし、アシストは量産するけど点が取れないオリセーも評判通りだった。エンタメ方向に大きく振れてしまったが、スター選手が輝く姿が見れてよかったとも言える。 いよいよ決勝のキックオフ時間が近づいてきた。準決勝の戦いぶりを比較すると、スペインが圧倒的に支配して、守備時でも全員がサボらずに組織的なプレスを掛けてくるし、ヤマルもまだまだギアが上がっていないし、アルゼンチンは中3日で連戦の疲れがピークに達する頃だ。そうは言っても、ストライカーを比較すると、アルゼンチンに分がありそうだし、前半は支配させて後半に逆転するアルゼンチンの試合を何度も見てきたので、予想が難しい。 最後の決勝を残すのみとなったワールドカップ、色々と批判もされたけど試合自体は大いに楽しめたなあ。

1分小説 12)「すめらぎの里」 (1452 字、AI補正無し)

信州の過疎地に「すめらぎの里」と名付けられた孤児院が建設された。そこには家庭の事情で親と一緒に暮らせない乳児や児童が全国から集められた。藤原健は産まれてからずっとそこで過ごし、閉校寸前の小中学校に通い、車で片道1時間の高校に通うことになった。小田聡美は健の二つ上の幼馴染で、小学生までは健と一緒に遊んでいたが、中学生になってからは里の別棟で生活するようになり、健とは疎遠になった。 里の職員は破格の高待遇で、新進気鋭の若者から人生経験豊富なベテランまで、里に住む孤児の数ほどが働いていた。彼ら彼女らには集音マイクと通信機の装着が義務付けられ、誰に対しても丁寧な標準語で話すようにと指導されていた。里には訪問者が多く、学習院なんちゃらの高名な教授やスポーツ界の重鎮が出前授業や実技指導しに来た。里に住む孤児たちは大人になるにつれ他の家庭や他の孤児院との比較を通して自然と里に対する愛と忠誠が育まれていった。 健は高校で聡美の姿を遠目で見て、幼い頃に遊んだ記憶が蘇り、それはやがて恋心に変わる。しかし、里に住む孤児たちはスマホはおろかSNSおよびインターネットから情報を得ることを禁止されていた。聡美になんとかして思いを伝えたい健は手紙を聡美の蓋付きの下駄箱に忍ばせた。その手紙には口語体でふざけ合った思い出と健の下駄箱の位置が記してあった。高校が終わると健と聡美は別々のワゴン車で里に戻る。里では中学生以上の男女の密会は禁止されていた。健はその二日後に聡美からの手紙を下駄箱で受け取った。その手紙には「受験勉強で忙しいけど手紙の読み書きをする時間を作ってやってもいい」と上から目線で書いてあった。健は手紙ではなく紙切れを筒状にして結んだものを投函するようになり、聡美もその作法に従った。二人の文通は半年に及び、聡美は第一志望の首都圏の大学に合格した。聡美は高校卒業と同時に里を退所して一人暮らしする予定だ。学費と生活費の初期費用は里から無利子で借りることができた。 まだ告白していない健は焦りを感じていた。もし両思いであっても二人きりで会えるのは二年後だ。それまで聡美は不自由な思いをすることになるし、健も「浮気してないか?」と悶々とすることになる。そんな心理状態で二年間過ごせるとは思えなかった。健は意を決して里の総責任者に聡美との交際を認めてほしいと直談判しに行った。総責任者は「そろそろ君が来る頃...

アルゼンチン対イングランド

 北中米ワールドカップのアルゼンチン対イングランドの試合を次男と観戦した。今回は前日の23時に就寝するも眠りについたのは午前2時前後、2時間の睡眠の後で次男が起こしに来た。俺は寝たきりで運動しないので、2時間ほどの熟睡で十分なのだ。そんなわけで完全に覚醒した状態で試合の一部始終を視聴することができた。 メッシは守備を免除されているので、守備時は歩いている。それは準決勝のFIFAランキング4位のイングランド戦であっても変わらない。アルゼンチンは一人少ない人数で頭一つ高いイングランドの選手たちの攻撃を受けることになる。走力も兼ね備えている巨人たちの突破を小人たちがスライディングタックルを駆使して必死に守る。そんな展開が続いた前半だった。特にCKなどのセットプレイ時には名手ライスから放たれるボールに群がる空中戦ではイングランド有利に見えた。 後半に入ると、イングランドの圧迫守備の頻度と強度が落ちてアルゼンチンがパスを回す場面が増えてきた。アルゼンチンには「守備ばかりの苦しみから解放され、ほっと一息」という感じで油断したのか定かではないが、守備のミスから先制されてしまう。「ああ、これは痛い。前半のように双方が攻めあぐむ展開を作るためにイングランドが圧迫守備を復活させてくる」と思っていたが、俺の素人采配は採用されず「弱小国が逃げ切るために用いるゴール前に人数を割いて引きこもり、セカンドボールを攻撃に繋げることは考えない、主導権を放棄した」戦術が取られた。そのまま勝ったら称賛されるだろうから所詮は結果論なのだが、砲台としても優秀なメッシに自由を与える戦術はアルゼンチンを応援する立場の俺には歓迎すべき選択だった。実際、イングランドのGKのスーパーセーブが続き、そのたびに次男の悔しがる声が夜明けの寝室に響いた。アルゼンチンはラウタロを投入する。ラウタロはある意味で、ラッキーボーイで、彼が投入されてから得点が生まれることが多い。今回もメッシからの折り返しをエンソが強烈なミドルシュートをゴールネットに突き刺し、後半のアディショナルタイムにメッシの右足から放たれたセンターリングをラウタロが決め、2対1でアルゼンチンが勝利した。 決勝はスペインとの対戦、新旧のバルセロナのエースであるヤマルとメッシの対決でもある。

スペイン対フランス

  北中米ワールドカップのスペイン対フランスの試合を次男と観戦した。ただし、後半のみを視聴した。 戦前はフランスが日程の面でも戦力の面でも圧倒的に有利だと思っていた。特に世界的なストライカーであるエムバペの有無が勝敗を分けると思っていた。しかし、前半のスコアは1対0でスペインが勝っている。後半の内容を見ていると、そのスコアに納得した。点を取らなければ敗退するフランスは猛プレスと猛攻を仕掛けてくる。猛プレスに対してスペインは怯むことなくパスを繋いで、あるときはプレスに引っかかり、あるときは見事にくぐり抜けて前線にパスが供給され、時には決定的なチャンスをもたらす。猛攻に対してはエムバペやデンべレの突破に守備選手がついていっているし、抜かれることはあっても中央の守備組織は崩れない。 「どこかで見た光景だなあ」と思っていたら、バルセロナとレアルマドリーの試合と同じ展開であることに気付いた。スペイン代表の中盤はほぼバルセロナに所属する選手で、普段の試合から激しいプレスに晒されているし、そのプレスを無力化するまでパスを繋ぐのがバルセロナのバルセロナたる由縁なのだ。「パスはよく繋がるけど点が取れない」と評されることが多いスペインだが、裏を返せば「最強と評されるフランスにもパスを繋ぎ、真っ向勝負できる」ということだ。そうなると勝負は時の運、今回はスペインが2対0で勝ったが、スコアが反転して「さすがはフランス」という展開も十分起こり得たと思う。 スペインは結果的に決勝トーナメントの準決勝で最高の試合をして、フランスは余力を残しての敗退となった。後半終盤にニコウィリアムスが投入されて2年前にユーロを制したことを思い出した。以下は視線入力時代からのシングルカットである。 「サッカースペイン代表の未来は明るい」 ユーロ2024とパリ五輪の日本対スペインを見た後の感想だ。エアマウス時代末期の俺を哀れに思ったのか、次男がユーロとコパアメリカを随時観戦できるネットサービスを契約してくれた。そのおかげで一日一試合のペースで観戦することが出来た。しかし、期待に反して眠くなるような試合が続いた。特にイングランドは、ケイン、ベリンガム、フォーデン、サカという夢の攻撃陣がいて、この試合運びかよと憤ることばかりだった。フランスとドイツもまた然り。唯一の例外がスペインだった。 両翼を担うニコウィリアム...