投稿

長年の呪縛

 俺が子供の頃、実家の便所は一個だけで小便器と和式大便器が壁で仕切られていて、窓はあったが換気扇はなかった。その構造ゆえにウンコの臭いをかぐことは日常茶飯事で、残り香で誰が直前に入ったかを判別することができた。 大学に合格して、福岡でアパートを探そうとなったとき、「親の金で大学に行かせてもらっている立場であるから、どんなに安くて劣悪なアパートでも構わない」とは思いつつも、「できれば、風呂とトイレが別室になっているアパートに住めたらいいなあ」と思っていた。不動産業者もその辺りの事情は熟知しているようで、別室になっていることを強調してセールストークを展開していた。 時は流れ、俺は結婚して釜山大学で定職を得た。借家暮らしで資金を作り、ダメモトで見学に行ったマンションが思いのほか好条件で、その場で購入を決めた。ただし、浴室と洗面台と洋式トイレが一室に収められていた。幼少時の経験から「残り香が漂う空間で風呂に入るなんて真っ平ごめん」と思っていたが、実際に生活してみるとそういうことは皆無だった。先ず、昔の洋式トイレは水が浅くこびりついていたが、それから格段の進化を遂げ現在の水を十分に張って臭いを最小限に抑え込む様式が定着していた。次に、換気扇が電灯に連動して作動する。この二つによって快適な入浴時間を送れている。 見逃せない点は掃除が非常に楽なことだ。別室の場合、飛沫が床や壁に付着している前提で掃除するので神経を使うし時間もかかる。一室の場合、床や壁をシャワーで洗い流すだけだ。かくして俺は長年の呪縛から逃れることができた。

温泉巡りの旅 2)釜山、虚心庁

 釜山広域市の地下鉄温泉場駅から徒歩5分の位置にある虚心庁は日本で言うところのスーパー銭湯のような巨大浴場施設だ。その近所に温泉が湧く小規模の銭湯がある。その泉質をどのくらい希釈しているのか定かではないが、虚心庁でもれっきとした温泉だと言うことだ。温泉と思って入浴すると物足りないと感じるが、虚心庁の魅力はそれだけに留まらない。今回は俺の視点から虚心庁の快適性を伝えたい。 虚心庁は温泉場地区の最高級宿泊施設である農心ホテルと通路で連結されている。農心ホテルは釜山大学と提携していて、釜山大学教職員が予約すれば宿泊客が一般人でも割引価格が適用される。そのために農心ホテルに出入りすることが多く、虚心庁に同行することもしばしばあった。そんなわけで俺が教員だった頃は年に四五回は通っていた。それは付き合いだけでなく、純粋に自分がくつろぎたいがために通っていた。農心ホテルではプロ野球選手の集団と遭遇することもしばしばで、そのたびに「戦いの疲れを虚心庁で癒しているんだろうな」と想像を膨らませていた。 虚心庁のエントランスにはコインロッカー式の下駄箱が設置されていて、施錠して引き抜いた鍵でチェックインする仕組になっている。フロントで衣服用の電子錠と下駄箱の鍵を交換してからの入場となる。衣服を脱ぎ、衣服と荷物を個人用のロッカーに入れて施錠した後、電子錠のみを手首に結びつけた格好で大浴場に向かう。日本ではタオルで局部を隠して移動するが、韓国ではそういう人を見たことがない。この辺りは日韓の入浴文化の違いが如実に現れていて非常に興味深い。大浴場では体を洗うためのシャワーが多数設置されている。そこにはアカスリ用のタオルが山積みされていて自由に使える。使用後は回収用の箱に入れることになっていて、日本のようにタオルを湯舟に持ち込んだりしないようだ。大浴場の周辺には、打たせ湯、サウナ、ジャグジー、赤土湯、露天風呂、ビーチ用ロッキングチェアーなどが設置されていて、ありとあらゆる種類の要望に応えるほどの充実度を誇る。個人的に四十肩を患っていたとき、4mの高さからこれでもかという水量で落ちてくる打たせ湯に大変お世話になった。厳冬の時期の露天風呂もまたおつなものだ。 これで終わらないのも日韓の違いの一つだ。大浴場出口には体を乾かすためのタオルが山積みされていて、用が済んだら回収箱に入れることになってい...

公職選挙法

 生成AIに「公職選挙法って変じゃない?」と尋ねたら、「金持ちが選挙で有利にならないように」という原則に基づいた制定の経緯を説明した後、以下のような個別の事例を示してくれた。 ……………引用始め 選挙カーで移動中は名前の連呼しかダメ(政策を話すと違反)。→ 走ってる車から政策聞こえないのに、名前だけ連呼…有権者に失礼すぎる。 コーヒーは買収だけどお茶はOK、せんべいはOKだけどサンドイッチはNG、まんじゅうはOKだけどケーキはダメ…昭和の基準がそのまま残ってる。 選挙事務所に提灯はOK(明治時代の街灯がない時代の名残り)。 戸別訪問禁止(世界的に珍しい厳しさ)。 18歳未満は選挙運動NG(外国人ならOKなのに)。 電子メール・SMSで投票依頼はNGなのに、SNS(X、Instagram、LINEのメッセージ)はOK…なぜメールだけダメ? 投票日当日のSNSで「〇〇さんに投票しました!」(投票用紙写真付き)は選挙運動とみなされ違反の可能性。秘密投票の原則を自分で壊すリスク。 ポスターのサイズ・枚数・掲示場所が細かく決まってるのに、最近は公営掲示板に広告やほぼ裸のポスターが貼られる問題 → 2025年に品位保持規定が改正されたけど、まだ不十分。 ……………引用終わり 選挙カーでの名前連呼が公職選挙法による縛りのためだったとは!? SNSはメール機能を含むのでは? そもそも、票を金で売買することが問題で、金持ち自体は悪いことじゃないし、上記の原則を完全に守ることができるとは思えない。選挙期間外に楽な仕事を課して高額報酬を払うとかいくらでも抜け道はありそう。 公職選挙法が悪用されて政治家を罪人に仕立て上げる側面はないのか? などの疑問は尽きない。公職選挙法の改定を選挙公約に掲げても支持が拡大するとは思えないからなあ。せめて労働に見合った対価が得られるように改定してほしい。

トランプ関税は違法

 トランプ関税が発動されたのが一年前、世界中があたふたして、日本では赤沢大臣が交渉役に任命され、日米を何度も往復して交渉を重ね、日米合意が成立するのを見届けてから石破首相が退任した。先日、米国の最高裁判所で「トランプ関税は違法で無効」という判決が出た。このことについての感想を述べる。 1)例えばの話だが、米国がある国と交戦中、最高裁判所で「この戦争は違法で無効」という判決が出たとき、大統領は素直に戦争をやめるだろうか?いや、司法の判断より上位の国家的判断と考え、戦争を続けるのではなかろうか?そもそも、司法の判断に従わせる強制力は政府側にあるので、政府側のトップにいる大統領を止めることはできない。と思っていたが、トランプ大統領は文句を言いながらも判決に従う姿勢を見せている。今回の裁判で保守派の裁判官がいたのにこの判決が出たことに驚いたし、勇気がいる判決だったと思う。 2)これまでのドタバタは何だったのだろう?日米合意に基づく80兆円の対米投資や日本のみならず各国と結んだ貿易協定はなかったことになるのだろうか?来月、高市首相が訪米して首脳会談するのだが、気まずい雰囲気になるのではないかと心配になる。 3)トランプ大統領は今回の判決を受けて、各国に一律10%の関税を課す大統領令を出した。ここまでくるともうわけがわからん。誰か詳しい人がいたらご教授願いたい。

ガラスの砂浜

 NHKの「有吉のお金発見突撃カネオ君」で大村市の森園公園の海岸部に敷き詰められたガラスの砂浜が紹介された。生成AIによると2016年に完成したそうだ。俺は2019年に森園公園で過ごしたことがあった。妻に「ガラスの砂浜があるから行ってみる?」と誘われたが、車椅子だったことと「ガラスの破片が無造作に捨てられているだけだろう」という勝手な想像で拒否した。 その番組では「大村湾の浄化のために最適な大きさに丸型に加工したガラスを敷き詰めていて、インスタ映えする人気スポットになっている」との説明があった。タイミングよく妻が寝室に入ってきたが、「テレビに大村が出ている」と短い時間に文字盤で伝えられるはずもなく、妻はその説明の最中に部屋を出た。 今日は日曜日、次男は風邪をひいて部屋から出てこない。大村滞在中の長男、長女、三男はそれぞれの興味で楽しくやっているらしい。妻は「最近、周囲によくないニュースが多くて私まで気が滅入る」と言っていた。 冬期五輪も終わったし、なんかさえない日曜日だなあ。そうだ、ガラスの砂浜の動画を撮影してくるように子供たちに頼んでみようかな。

温泉巡りの旅 1)草津温泉

 今までに温泉を始めとする様々な保養施設を体験してきた。日本国内のみならず世界の各地、例えば、死海、白頭山、などを時系列にはこだわらずに気の向くままに紹介していきたい。今回は草津温泉にまつわるよもやま話を語ろう。 「草津、良いとこ、一度はおいで、チョイナ、チョイナ」のチョイナの部分をジョイナに替えて歌い、陸上界のスーパースターだったフローレンスジョイナーの扮装をした者たちが通り過ぎるパフォーマンスがテレビ番組「俺たちひょうきん族」で流された。それが25歳だった俺が草津についての知識の全てだった。俺の師匠から誘われるままに草津で開催される有限群論セミナーに参加することにした。当時はどのような性格の研究集会か見当もつかなかったが、平たく言うと、有限群論の大家たちを囲んで群論にゆかりのある分野の研究者が集い、温泉や山歩きを楽しみながら数学を語り合うという数学者の桃源郷とも言える集会だ。ただし、セミナーハウスの収容人数に限りがあるので、誰でも参加できるわけではない、一見さんお断りの京都の料亭のような雰囲気がそこはかとなくあった。 若手が研究成果を発表するのだが、自己紹介の場でもあり、質疑応答で蜂の巣になることもしばしばで、結構な圧迫感があった。夜は自由時間で、温泉に入ったり、囲碁をしたり、酒を飲んだり、思い思いの時間を過ごす。全発表が終了した後は希望者のみの山歩きが催され、その帰りに川のように温泉水が流れる浴場施設に立ち寄った。一緒に山歩きをすると連帯感が生まれ、研究者としての序列を忘れ、自然と会話できるようになるものだ。それでいて温泉に浸かりながら専門的な数学の話が始まったりもする。 俺は何かを強いることのない自由な雰囲気に感銘を受けた。いや、その当時はあるがままを受け入れていたので、感銘というのは年齢が上がるに徐々に感じるようになったと表現するべきだ。今でも大家との会話を記憶しているし、セミナー中に見聞した全ての事象がその後の俺の人生に大きな影響を与えている。何より、このコミュニティが好きになったし、一生を通して関わりたい。そのためにはプロにならなきゃという思いを新たにした。

外出と顔本

 今日の午後、妻と次男の助けを借りて外出した。出発時間は14時、いつものように区役所の広場で日向ぼっこをした後、いつものコースで帰宅したのは1 6時だった。妻は終始ハイテンションで、「お父さんを家に残して外出してもお父さんが気になって楽しめないけど、今日はその心配をしなくていいから心から楽しい」と言っていた。 長男、長女、三男が大村に滞在中で不在の間、妻は次男に「ゲームばかりしてないで将来のことを考えて行動しなさい」みたいなガチの議論を吹っかけるようになった。一昨日の夜は24時から26時まで硬軟入り混じった話をしていたようだ。今日も普段はあまりしない話題を議論していた。 俺は親と2時間話すことはない。用事だけ伝えて結論を出すか先送りするか決めるだけなので、話してもせいぜい30分が関の山だ。妻の家族への接し方を見ると「仲がいいんだな」と思うと共に俺が育ってきた環境との違いに驚くことが多い。男女の違いかもしれない。 帰宅すると、注文していたスマホが届いていた。早速、開通させてフェイスブックのアカウントも復活した。不思議だったのは1ヶ月前にどんな手を尽くしても決して叶わなかったログインがパソコン内に保存してある既存のパスワードで達成できたことだ。「もしかしてスマホは関係なかった?」という疑念が生じたが、妻に直接伝える勇気がないので本欄に記すことにする。