蹴球伝説 2)
「おい、反則だ」と思わず日本語で叫んだ。時は2007年10月、場所は釜山広域市のサッカー場、俺は釜山大学教授蹴球会の一員として全国大会の出場権を賭けて釜山教育大学の教員チームとの試合に臨んでいた。ただし、釜山大は主力を温存していた。これは「その前の試合で出場機会のない教員に対する配慮」と「全国大会に出場したらその費用を会費だけでは賄えない」と「とりあえず、前半の様子を見てから本気で全国大会を目指すか決めよう」という複雑なチーム事情が起因していた。 最年少で、そのチーム事情を理解してなさそうで、常に勝負にこだわり、学生チームとの練習ゲームでも熱くなる、俺は何の説明もされずに二試合連続でスタメンに名を連ねていた。俺の目には「俺の手でチームを勝利に導く」という青い炎が宿っていた。 教育大のプレイは荒かった。最初は「真剣勝負で興奮してついつい脚が出るのだろう」と思っていたが、時間が過ぎるにつれ、「もはやラフプレーの範囲を越えている。相手を負傷させることを目的としてやっているとしか思えない。コイツらも大学教授なのか?」と疑念を抱くようになった。特に教育大の10番はその背番号とは裏腹に審判の見てないところで脚を蹴るという悪質な行為を繰り返していた。冒頭の叫びも10番が俺を背後から押して、俺がつんのめったところで発されたものだ。俺は怒りに震え、「どうやって復讐するべきか」を考え続けていた。しかし、アンチフットボール的な手段で復讐を果たしても同じ穴のムジナになってしまう。やはり、最大の報復は正攻法で試合に勝つことに尽きる。現在、スコアレスで前半を終えようとしている。俺はチームメイトを鼓舞してピッチ上の誰より動き回り、体を張って守備をした。すると応援に来ていた学生チームの面々から「ひ、ら、さ、か」とコールされた。もう気分はブラジルで大声援を受ける三浦カズだ。 後半から釜山大の主力たちが投入されて、俺のポジションは中盤に上がった。俺は中盤で相手チームのボール保持者のパスコースを切りながら間合いを詰め、ボールを奪い取った。自信を深めた俺は縦横無尽に動きまくり、敵の攻撃の芽を摘むと共に味方の攻撃の起点となった。その働きは俯瞰で撮影したDVDに記録されている。釜山大優勢のまま推移したが、引き分けだと教育大が全国大会出場となり、復讐も成就することはない。後半終了間際、釜山大はコーナーキックを得...