京都ALS患者嘱託殺人事件 3)

 「京都ALS患者嘱託殺人事件」という映画が10月31日に公開される。俺とこの映画との関わりを数回に分けて紹介しようと思う。

この映画を語る上で避けては通れないのが「安楽死」というキーワードだ。安楽死と言えば漫画「ブラックジャック」に出てくるドクターキリコを思い出す。作中ではブラックジャックにやり込められるのだが、悪役ではあるけれど必要悪という感じ描かれていた。大人になっても意見が分かれる問題を少年誌にぶっこむ作者の手塚治虫は偉大だと思う。

安楽死は日本では違法だ。しかし、合法の範囲で自然死に見える医療行為は日常的に行われている。例えば、助かる見込みのない危篤状態の患者に新たな管を繋いで延命することを避ける医師もいるし、それはある意味で人道的な判断に見える。自殺ができないALS患者に積極的に人工呼吸器の装着を勧めないマニュアルも同様だ。末期のがん患者を退院させて自宅で最期を迎えてもらうのも「長く生きる」ことより「生きている間の充実」を優先した判断なのだろう。

つまり末期医療に関わる医師は安楽死に対して表向きは「絶対、やってはいけないこと」と言うものの内心ではその線引きに複雑な思いを抱いていると想像する。俺は幸いにALS以外の疾患とは無縁だが、仮に、虫歯が痛んで、五十肩に苦しみ、片頭痛が頻発し、酸素飽和度が上がらず、食事のたびに胃もたれが起こり、股間の痒みが止まらず、膝の痛みが続き、その全てが回復の見込みがないなら、「今すぐ死んでこの苦しみから解放されたい」と思い、医師に安楽死を懇願しただろう。

2025年1月30日、見知らぬ人からメールが来た。その人は一週間後に俺の自宅を訪問してくれ、安楽死についての議論を交わした。それはこの映画の監督との初対面でもあった。

コメント

このブログの人気の投稿

32年の時を経て

同級生、来たる

仲里依紗の家族史