勿忘草の感想

NHKのドラマ「勿忘草の咲く町で」は長野県安曇野の総合病院を舞台にした医療ドラマで、現役医師で小説家である夏川草介の同名小説を原作として制作されている。無知な俺は「医者は高給取りなんだから多少の忙しさは我慢するべきだろう」と思っていたが、このドラマを見てから「たとえ年収五千万円でもあんな過酷な仕事はやりたくない」と思うようになった。大都市の総合病院だと十分な数の医師が確保されていてなんとか回していけるし、開業医だと診療が中心で夜中に救命病棟に駆り出されることもないし、人の生命に関わる選択を迫られることはない。要するに救命の内科医と外科医はその激務と責任の重さ故になり手が少ないし、地方に行くほど待遇が悪くなる。そんな状況で地方の総合病院に勤務する医師たちは使命感とやり甲斐搾取で奮闘していることが伝わってきた。

仇名が死神である谷崎は延命治療を施さず高齢の患者を次々と看取っていく。彼は「死期を迎えた高齢者に多大な金銭的且つ人的資源が消費されている」ことに疑問を持ち続けていて、危篤状態の患者に付き添う看護師と自分の負担を軽減しようとして死神看取りをしていることが第四話で明らかになる。内藤剛志が演じる谷崎と「治すために全力を尽くす」研修医の桂との対立が前半の山場となる。医療従事者の哲学の衝突はどちらの立場も納得できる根拠が提示され、見応えがあった。

病院の患者たちが「もしかして本物の患者さん?」と疑うほど迫真の演技をしていた。第五話では誤嚥で亡くなる入院患者の話で、「もっと注意深く見守っていればよかった」と責任を感じる看護師と「複数の患者を食事の間中凝視することは不可能だ」と擁護する谷崎との対比が見所だった。俺も嚥下障害を経験したので他人事ではなかった。来週はその事件を巡って訴訟があるらしい。

俺の脳内ではこのドラマは医療ドラマとして最高峰に属する。同じ医療を扱う某ドラマとは天と地ほどの差があるなあ。

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