まだ六割残っている!
食べることが好きだった、体を動かすことが好きだった、会話に参加してたまに気の利いたことを言うのが好きだったが、ALSはその全てを奪っていった。
今の俺はテレビを見て、音楽を聴いて、あれこれ考えるだけの生活だ。俺の人生に何が残っているのだろうか?その問いに答えるべく、昔取った杵柄(数年前まで数学者だった)を用いて計算してみた。
視力、聴力、思考力の重要度をそれぞれa、b、c として、その他の残存機能、ALSによって失われた機能の重要度をそれぞれ x、y とする。ただし需要度は俺の主観で決定され、百分率で表示される。すなわち、上記の変数は全て正の数で a+b+c+x+y=100 である。
俺は思った。視力と引き換えにALSが治るのであれば悪くない取り引きだなと。同様に聴力と引き換えでも悪くないと。思考力は程度によるがアルツハイマー初期くらいなら引き換えるのも悪くない。しかし、視力、聴力、思考力のうち二つと引き換えにと言われたら拒否するだろう。このことを数式で表すと次のようになる。
y<a+c、y<c+b、y<a+b
これらを足し合わせて
3y<2(a+b+c)
それ故に
100=a+b+c+x+y<a+b+c+x+2/3(a+b+c)<5/3(a+b+c)+5/3x
これを変形して
60<a+b+c+x
が得られる。すなわち、まだ六割以上の機能が残っているのだ。そう考えると「俺の人生、まだまだ捨てたもんじゃねえなあ」と思えるから不思議なものだ。
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