1分小説 7)「初めてのスナック」 (文字数、714字、AI補正無し )

弁護士の西村はスナックでウィスキーを飲んでいる。傍らには大学生の長男がいる。

「成人してから飲みに誘うのが父さんらしいよね」

「母さんには内緒だぞ」

「その母さんのことだけど……」

西村はぎくりとした。些細なことで言い争いになるのは昔からだが、ここ最近は妻の態度が冷めていて仲直りの機会を与えることもなく、「もしかして熟年離婚を考えているのか?」と疑っていたのだ。

「俺、母さんが男と二人きりで食事しているのを見たんだ」

「まさか、母さんがそんなことをするわけが……」

「あるんだよ。母さん、結構人気あるし。それに……、やっぱり言うのやめるよ」

「なんだ、気になるじゃないか。言いなさい。言わないと仕送りを止めるぞ」

「わかったよ。そこまで言うなら話すよ。実は半年以上前の話なんだけど、母さんがその男と抱き合っているのを見たんだ。それだけじゃないよ。自宅の寝室で胸をはだけて寝ているのも見た」

「お前、嘘をついているだろう。父さんは弁護士だ。証拠がない限り真実とは認めん」

「全て真実だよ。法定で証言だってできる。それに証拠写真だってある」

「慰謝料、がっぽり取れそうだな。とりあえず、その写真を送ってくれ」と言うと、西村はウィスキーを一気飲みした。

一部始終に聞き耳を立てていたスナックのママが「呆れて物も言えん」という表情で水割りを作っている。長男は5本の指を掲げて

「せめてこのくらいははずんでもらわないと」と言うと、西村は財布から五万円を取り出し長男に手渡した。

「一桁足りないなあ。残りは裁判の後でいいよ」と言うとスマホを操作して送信ボタンを押した。

西村は「やっぱりな」という表情でスマホの画面を見つめている。

そこには次男に授乳中の妻が映っていた。

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