1分小説 1)「飲む、打つ、買う」 ( 816字、朗読したら2分30秒)

俊夫は上機嫌だった。「じいさん、負けたよ。あんたが本当のトップオタだ!」

俊夫の推しは小西唯、給料の大半を飲み代とギャンブルと握手券に注いでいる。その握手会でよく見かける老人に声をかけられ、居酒屋で意気投合し乾杯を繰り返していた。

「今日は俺の奢りだから、どんどん注文して」と言って、化粧室に向かった。帰って来ると老人の姿はなかった。

その帰り道で半グレ風の男に因縁をつけられた。男は駅地下のコインロッカーの鍵を渡し、ロッカーの中の開けて指示書に従うようにとすごんだ。背後から男が見張っている。鍵の番号は524、語呂合せは小西、俊夫はこんな状況でも推しとの再会に心を踊らせていた。ロッカーを開けると、競艇新聞に包まれた札束が入っていた。俊夫は札束を懐に入れると一目散に逃げ出した。

俊夫はネットカフェで夜を明かし競艇場に向かった。札束の額はきっちり百万円、524の三連単にオールイン、当たれば1億、その金で起業してみるか、なーんてな。

奇跡が起きた。換金所で別室に案内され、口座振り込みの手続きをした。

ある考えが浮かんだ。この金を推し活に使ったらどんな見返りがあるんだろう? 俊夫は小西唯のマネージャーに残高をスクショしたDMを送った。その日の夕方、返事が来た。振り込みを終えて指定されたホテルに来いと書いてある。俊夫はその通りにすると、客室に招き入れられ、シャワーを浴びるように命じられた。その後、小西唯が来るから1時間だけ自由にしてよいと言われた。

シャワーを浴びていると、ドアが開閉する音が聞こえた。

浴室の扉を開けようかと迷い30分が過ぎ、服を着直し身なりを整えて30分が過ぎた。扉を開けると、あの老人がいた。「気にいった。お前が本当のトップオタだ。孫はコンサート会場にいる。今度はワシの奢りじゃ。ついでにビジネスのやり方も教えてやろう」

コメント

このブログの人気の投稿

同級生、来たる

まだ六割残っている!

32年の時を経て