日本列島超改造論
長崎県は離島が多い。そのため県採用の教員は壱岐、対馬、五島の離島地域で一定年数の勤務が義務付けられている。この制度により人材の流動化が促され、教育格差の解消に一役かっている。このことを日本全国に適用して過疎化や少子化の対策を提示してみよう。
各都道府県で過疎地域を指定して、それ以外の居住地に住む30歳以下の国民に3年間過疎地域に住むことを義務付ける。義務と言っても、強制力はなく税制上の優遇措置や不利益もしくは社会的圧力によって実行率を上げていく。端的に言うと、東京23区の若者は田舎暮らしを経験して来いという趣旨である。この制度が何をもたらすのか。
大企業は過疎地域に研修所を作って新卒社員をそこに住ませてリモートで勤務させるだろう。中小企業はそんな余裕はないから3年間の義務を終えた若者を採用しようとする。すると幼いうちに過疎地域に住むという選択をする家庭も出てくるだろう。大学の分校や専門学校も過疎地域に移転して来るかもしれない。田舎では車が必要になるから自動車の国内需要を喚起するはずだし、地方も建設ラッシュが起こり、持続可能な経済発展が見込まれるだろう。とにかくこの制度により人間の大移動が起こり、新たな国内需要が生み出され経済発展するということだ。
経済効果はさておき、重要なのは都会の若者が田舎の良さを知ることだ。過疎地域は空き家だらけだから家賃は安い。都会の便利さを捨てるかわりに低コストで生活できること、更に、仕事が無さそうな過疎地域にビジネスチャンスが広がっていることに気付くことだ。例えば、老人ばかりの地域でスマホ教室を開くとかライドシェアの仕事をするとか介護事務所を立ち上げるとか都会で流行りのスイーツを提供するカフェを開くとか、都会の情報を伝えるだけでも生きていくための収入は得られるだろう。それは同時に過疎地域が都会の文化を知ることで、特産品のネット販売や観光地の宣伝、地域の魅力を発信、農作業や農村の暮らしを海外富裕層に体験してもらうことの案内、などの地方創生に繋がる 可能性を秘めている。
上記の制度を31歳以上60歳以下で3年、61歳以上で3年、のように拡大していく。前者は9年働いて有給で1年休む、大学教員がサバティカルと呼んでいる制度が一般企業に波及することを目標としている。後者は子育てを終えた世代が地方に移住して住宅のダウンサイジングを促し、高齢者に地方でお金を使ってもらい経済を活性化させることを目標としている。そうすれば過疎地域の自治体は競って移住環境を整えようとして、総合病院や老人ホームが建設されるだろう。同時に都市部では空き家が生じるので、これから子育てを始める世代に家賃の低下などの恩恵が見込まれるだろう。
都市生活は魅力に溢れている。娯楽は多様だし、商業施設も充実している。原始的な幸福、結婚して子供を産み育てる、よりも、楽しく刺激的なこと、自己実現を可能にする仕事が見つけやすいのが都会の特色だ。晩婚になりがちなのは致し方ない。子育てにも家賃という障害が立ちはだかる。地方出身の男女が結婚して子供が生まれた場合、東京近辺に住もうとすると家賃20万~30万円くらいはかかるだろう。二人目が生まれたら、また更なる出費を覚悟しなければならない。共働きで、実家の助けなしで子供を保育所に送り迎えして家事に育児に仕事に追われる生活を経験したら「子供はもういい」と考えがちになるのは自然なことだろう。要するに現代の都市生活は子沢山の家庭と著しく相性が悪い。
一方で、都市にも地方にも原始的な幸福を至上のものと考える人は一定数いるだろう。そんな人々に移住の機会を提供すること、都市部の広い住宅を格安で賃貸できる可能性を提供することがこの制度の骨子であり、少子化対策として期待される。その場合、自治体や行政の支援で、例えば、一流シェフが給食を作る街、小学生でも英語を話す街、スケボーが出来る街、元日本代表がサッカー教室を開く街、総合格闘家を養成するためのメガジムがある街、のように特色を出していけば、自然と人が集まり、多産が当たり前の育児がしやすい地域が形成されるのではなかろうかと夢想している。
次期総理大臣がこの制度を政策目標として掲げることはやぶさかではない。
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