バレンタイン哀歌

今日はバレンタインデーだ。ここ韓国でも女性が男性にチョコを贈る文化が定着しているのだが、日本ほどの盛り上がりは感じられない。その理由の一つとして韓国の新学期は3月2日から始まるので2月14日は春休み期間中であることが挙げられる。


我が家ではそういう商業文化を避ける空気が支配的なので義理チョコを買ってくる者もいないし、チョコをもらって喜ぶ者もいない。職場でも袋入りの小さなチョコをお裾分けされたことは贈答用の義理チョコをもらった記憶がない。ある意味で韓国の方が健全なのだが、そわそわして下駄箱や机の中を覗き込むような男女共々悲喜が入り混じった劇空間を演出する日本のバレンタインデーも捨てたものではないと思う。


そんなバレンタインデーと聞いて思い出すのは小学校四年生の冬のことだ。その当時の俺は運動が苦手で、小さい方から2番目の身長で、スクールカーストの最下層に属していた。その対極の位置にいたのがK原君だった。クラスで一番の長身で、運動会のリレーでは驚異の追い上げで観客を沸かし、ドッジボールでは片手でボールを鷲掴みにして剛速球を投げるし、フットベースでは柵越えのホームランが当たり前で、サッカー少年団ではセンターフォワードとして将来を嘱望され、とにかく、昼休みは校庭で遊ぶことがデフォルトである小学校生活においてのヒーローだった。


バレンタインデー当日の放課後、俺はK原君と帰宅中だった。校庭の出口に差し掛かろうとするとき、K原君は俺の方を向いて「これ、やるよ」と言って包装されたチョコを渡した。俺は何の疑問も持たずにチョコを受け取り、学校の敷地を出たところで包装を破り中のチョコを食べ始めた。「なんか視線を感じるなあ」と思い、振り返るとある女子児童が泣いている姿が見えた。その子は同じクラスのYさんだった。ちなみにYさんは活発で発言力もあり、容姿も良かった。俺は瞬時に「俺が食べているチョコはYさんがK原君に贈ったものに違いない」ということを理解した。そして彼我の差に愕然とすると共に「Yさんがかわいそう。K原君も酷いことをするなあ。このままでは俺が逆恨みされるかも」と思った。


追伸)今日からJリーグが開幕。鹿島の新監督に就任した鬼木氏の手腕に注目している。鬼木氏は選手時代に鹿島に所属するも厚い選手層に阻まれ、川崎に移籍して主力として活躍するもナビスコ杯決勝で鹿島に敗れる。川崎のパスサッカーの基礎を築いた風間氏から監督の座を引き継いでからの快進撃は周知の通り、日本代表にも数多くの主力選手を輩出している。

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