冬物語

 今から35年前、俺は受験生だった。受験で思い出すのは原秀則作の漫画「冬物語」だ。主人公の森川光は滑り止めの八千代商科大学にも落ちて浪人した後に合格したのが同大学のみという現実に直面する。


それは漫画だけの話ではなかった。団塊の世代ジュニアと呼ばれる俺の年代は常に競争に晒されてきた。受験はその際たるもので、光のように浪人しても志望校が遠のくことはよくあった。だからこそ光に自分の姿を重ね合わせて共感を呼んだのだろう。光は片想いもすれば恋もする。その葛藤で勉強に身が入ったり入らなかったりする。俺が冬物語を読んだのは大学に入ってからだが、光の心理描写は心に刺さった。


話の展開として、俺の受験での苦労話が出てきそうなのだが、年を重ねたこともあり、むしろ楽しい思い出として記憶されている。冬物語の舞台は東京の予備校だったが、俺は地方の進学校の高校三年生だった。受験という同じ目標に向かって収束するも受験が終わったらそれぞれの進路に発散していき、もう二度と戻ることはない刹那的な空間を同級生たちと共有したことは忘れ難い思い出となっている。


何が言いたいのか自分でもわからなくなった。冬物語を読み返して、俺がどう感じるか試したいと思う反面、そっとしておいた方がいいような気もする。


追伸)講演開始時間の午前と午後を間違えた。

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