父の威厳

 今日は旧暦の元旦だ。長男、次男、三男は妻の実家がある浦項に向かった。長女に「お前は行かないの?」と尋ねると「お母さん一人だと外出できないから残ることにした。それに来年受験生だからね」という答えが返って来た。


大村に移住する前は毎年のように家族全員で妻の実家を訪れ、義父母が準備する料理に舌鼓を打ち、妻の姉妹家族と楽しい時間を過ごしていた。その料理は主に海産物で、食卓には刺身の大皿と白身魚の天ぷらとカセットコンロの上で煮立っている海鮮鍋が並ぶのが定番だった。「あの頃は幸せだったな」と思う。義母はガンを患い去年の3月に天国に旅立った。義父は交通事故による骨折は全快したが心臓の持病を抱え健康とは言えない状態だ。本来であれば、俺が率先して妻子を連れて馳せ参じ義父を元気にする役割を担っていたはずなのに、何もできない自分がもどかしい、いまさらだけど。


子供たちに「動画を撮って送ってくれ」と頼んだ。送られてきた動画に映っていたのは三男が従姉妹と遊ばずにiPadでゲームに興じる様子だった。激怒した俺は三男にゲーム禁止のお触れを出し、長男と次男に「おじいさんを元気付けることやおじいさんの思い出になることをしなさい」というメッセージを送った。


まだ彼らから返事は来ない。父の威厳が試されることになったが、後悔はしてない。

コメント

  1. いつも読んでますよ。私も子供には婆ちゃんに優しくしなさいと言ってます。それが実践されているか不安にはなります。

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