夢の講義

 久しぶりに夢を覚えていた。夢の中で俺は教壇に立ち大勢の学生の前で講義をしていた。黒板に大きな吹き出しを二つ描いて、それぞれに韓国語でリンゴとバナナと書こうとするが、何度も間違ってしまい学生たちから失笑が漏れる。動揺した俺は話すべき内容を忘れてしまう。取り繕うために別のことを説明し出す。「時間がないから続きは次回に」と講義を打ち切ったが、時計を見ると終了時刻の5分前で、「早く終わってよかった」という意味の歓声が湧き上がった。

この夢をどのように解析するべきかを夢判断が専門の心理学者に教えてほしい。実際の俺がどんな授業をしていたかについてはこれから説明していく。


初めて学部二年の線形代数を任された時、心に期するものがあった。それは俺が同科目を受講したときに受けた衝撃を追体験してもらうことだった。「失敗は許されない」と思った俺は入念に事前準備を重ねた。それまでの教育経験から「釜山大の学生は試験と名の付くものに対して類い稀な集中力を発揮する」という予備知識があったので、週2回の講義ごとに十分間の小テストを課すことにした。その問題は5問からなる真偽判定問題で学生たちはそのうち3問を選択して真偽判定の結果とその証明を書き込んでいく。満点は4点で3問の証明が正しいときに与えられる。真偽のみ書いて提出してもよいのだが、間違いの数によってマイナス点が加算される。自分で言うのもなんだけど、この小テストのユニークな点は「自信がなければ提出しなくていい」というところだ。ただし、小テスト終了時に提出しなかったら次の講義開始時に5問中2問を証明付きでレポート提出することにしていて、それが出席の証拠となる。そうすると出席を誤魔化したり、他人のレポートの丸写しで提出することができる。その予防策として小テストの時間に名前を呼んで出席を取り、「誰かに教えてもらったらその人の名前と謝辞をレポートに書いて提出すること」というお触れを出した。


「証明とは何か」を教えたくて始めたことだが、極一部の学生はファンになってくれたが、大部分の学生からは「難しい。答えを教えてくれ。定期試験に初見の問題しか出ないので勉強しても意味がない」という声が相次いだ。講義中は冗談も言わずに「視線を逸らした人に当てて質問するぞ」なんて言いながら授業ごとに10人以上に当てていたから眠る学生は居なかったが、学生にとっては嫌がられる存在だったろうなと想像する。


先日、釜山大数学科の卒業生から「就職した」というメールが来た。

俺と数学相撲でぶつかり合った卒業生諸君、もしこのブログを読んでいるのなら近況を知らせてほしい。俺にとっては最高の特効薬となるであろう。


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