のだめカンタービレを視聴した

 Netflix配信のドラマ「のだめカンタービレ」の全話を視聴した。以下はその感想だ。

1)このドラマがテレビ放映された年が2006年、そのときは視聴できず、ネットで大きく取り上げられていたのでその斬新なタイトルが記憶に残っていて、数年後に原作の漫画を読み始めたが、物語に引き込まれてしまい漫画喫茶で全巻読破した。その当時は「数ある面白い漫画の一つ」という位置付けだったが、今は「聞こえるはずのない旋律が聞こえてくるような表現で描かれた、音大、グルーブ感溢れるオーケストラ、クラシック音楽における才能、の世界を疑似体験したような気になる名作」と評価している。原作者は音大出身でさぞかしクラシックに精通している人なんだろうなと思っていたが、ウィキペディアに「楽譜が読めないどころか、クラシックの知識が全くない」状態で連載を開始したという記述があり、非常に驚いた。

2)ドラマは原作の漫画を忠実に再現していて、漫画を読み返すような感覚に陥るほど違和感がなかった。その上、漫画にはない「音」があり、物語と音楽の相乗効果を味わうことができた。瑛太が演じる峰龍太郎は漫画から飛び出してきたような再現度で、漫画同様に「個人の情熱や空回りしてるように見える頑張りが組織を動かす」役割を完璧に演じていた。

3)漫画での三木清良は普段はツンツンしていて、お目目ぱっちりのかわい子ちゃんとは対極に位置するクールビューティーとして描かれているが、時に感情を露わにすることがあり、その様子が実に無防備でエロいのだ。彼女を演じる女優は目を細くする化粧をしていて「誰だろう、この人?この人には隠そうとしても隠せ美とエロスを感じるなあ」と思っていたが、クレジットで水川あさみということがわかり、大いに納得した。

4)主人公の野田恵の千秋真一に対する態度を観察してると、恋人同士というよりも推し活をし続けるファンと言う方がしっくりくる。男女を逆転させれば、足軽がお姫様を「お慕い申し上げる」という態度だ。だからこそ、福岡県大川市の川原で二人が最接近した場面がリアリティを伴う感動を引き起こしたと思う。

5)理屈で動く千秋真一は世の男性の代弁者でもある。感情のまま動く野田恵は世の女性の極端な一面を極大化する存在だ。ジ原作に忠実であるが故に、野田恵が千秋真一に暴力的にも見える突っ込みを喰らうシーンも多い。ジェンダー問題に配慮しなければならない現代には制作できなかったか、もしくは原作が大幅に改変されたつまらない作品になったかもしれない。少なくとも俺はドラマで繰り広げられる男女の感情の機微を原作通りのわかりやすい表現で知ることができた。

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