水の声が聞こえる

 昨日、Netflix配信のドラマ「のだめカンタービレ」をテレビで視聴していたら、隣の寝台でスマホをいじっていた長男が「今、流れている曲はラフマニノフのピアノ協奏曲だね」と言った。長男は大村で過ごした二年間、大村高校の吹奏楽部に所属し、家ではエレキギターでレッドツェペリンの「天国の階段」の同じフレーズを繰り返し奏で、ピアノとエレキギターの個人レッスンに週1で通う音楽漬けの毎日を送っていた。そのときから今まで蓄えた知識でクラシックにも詳しいのだろうくらいに思っていた。ドラマでシュトレーゼマンの指揮で千秋がピアノを弾く場面が出てくると、長男は「この曲のこの部分を弾くときは叩きつけるように弾くんだ。この俳優の演技はよくない」みたいなことを言い出した。

趣味や思考回路が俺と似通っている次男とは対照的に、長男はしばしば俺の知識や理解を超えた言動をする。古くは、長男が3歳の時、俺と手を繋いで近所の川原を散歩して橋の下の暗闇にさしかかると長男は「水の声が聞こえる」と言った。俺は親バカ全開で「水の音ではなく、水の声と表現するとは。もしかして、詩人?」と驚いた。思春期は妻との衝突が激しく、「どうなることやら」と心配の種だったが、兵役を経て妻との関係も改善されて現在に至る。

最近では、俺がYouTubeでビートルズを聴いていると、長男が「お父さんが聴いてるのはビートルズによく似た声の人歌で本物じゃないよ」と指摘された。妻によると、長男は料理の隠し味を言い当てることがあるそうで、鋭敏なのは聴覚だけではないらしい。俺の客人が来ると、下の3人の子供は挨拶だけして自室に引きこもるが、長男だけは初対面でも積極的に会話に参加する。社交的とは言えない環境で育った俺にとっては長男の積極性は驚きだった。

長男はインドア派と思っていたが、大学のサークルはパラグライダーらしい。文字通りぶっ飛んだ選択だが、これまで経験から俺の短いものさしで測れるものではないようだ。そのうち「この人と結婚することになったよ」と言われた時に慌てない準備をしておかなきゃな。

コメント

  1. そうそう。長男くんはそんな感じだよね。すごくいい男でびっくりした。次男くんもなかなかいい男だな!

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  2. 長男やるなぁ。
    成長が嬉しい

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