KPPYセミナーの原点
昨日、BSJ教授からの電話があった。妻のスマホのスピーカー機能を通してその内容を把握することができた。地域の大学間学術交流を目的としたセミナーを始めたのは2006年前後だ。最初は釜山大学と浦項工科大学とで月毎に開催していたが、ある時期から慶北大学と嶺南大学が加わり、「KPPY Combinatorics Seminar」と改名して、土曜日に5人の講演者が自身の研究結果を50分以内に英語で紹介するという仕様で、年10回ほど開催してきた。俺がALSに罹患してからは年1回のペースで開催し、2025年9月20日に100回目を大々的に開催するという話だった。BSJ教授は世話役の一人で、今回は歴代の世話役を海外から招待して、ホテルの会議場で開催するそうだ。俺も現地に行って皆に会いたいのは山々だが、呼吸器を付けての長時間の外出は経験したことがないし、様々な不便が予想されるので参加は無理だと判断した。
俺が大学院に入学する直前の3月、京都大学数理解析研究所で開催された研究集会に参加した。過去に何度も書いているが、そのときに受けた衝撃が俺のセミナー活動の原動力となっている。一年上の先輩が研究結果を発表していた。「数学は10年以上の下積みが必要で、大御所かガロアのような天才しか新しい結果は出せない」と勝手に思い込んでいた俺にはその事実だけでもかなりの衝撃だった。発表後の質問や批評が物凄かった。年配の先生方が次々と論理的な駄目出しをやって、今後の研究の方向性についての宿題とも取れる提案を述べていた。それは若手だけでなく、全ての発表で起こる現象だった。そこは数学者たちの本気が交錯もしくは衝突する空間であり、数学の一分野を発展させる鍛錬の場にしようとする気概が満ちていた。
そのことを再現したいと思って活動してきた。数学は頭の中で完結する個人競技だと思われがちだが、研究集会や懇親会での雑談を通して新たな発想を得たり、共同研究に発展したりする団体競技の側面も確かにある。100回目を迎えるKPPYセミナーは延べ500人の講演者と100回の懇親会を通して様々な学術交流があったと信じたい。そんな難しいことを持ち出さなくても、俺自身はただ単に楽しかった。それが長年に渡って世話役の一人で居続けた最大の理由だと思う。
最後にBSJ教授を始めとするKPPYセミナーの歴代参加者全てにこの場を借りて感謝を伝えたい。
100번째 KPPY에 교수님께서 참석 못하신다는게 너무 아쉽습니다. KPPY 에서 혹시 전하고 싶으신 말씀이 있다면 알려주십시오. 대신 전하겠습니다.
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