胃瘻問題

昨日の夕食時、妻は俺の左脇に座り、俺の胃瘻に流動食を注入し始めた。胃瘻とは俺のように飲み込むことができなくなった患者に栄養補給するために胃の内部と体外を繋ぐプラスチック製のチューブのことだ。たまに詰まったりすることもあるが、注射器で吸い出したり、チューブをほぐしたり、水を強引に注入したりすれば、大抵の場合は解決していた。というか、過去に詰まったままで解消しないことは一度もなかった。

60mlの注射器で流動食を注入していた妻が上記の解消法を一通り試し始めた。どうやらチューブに食物が詰まっている様子だ。しかし、いつまで待ってもそれ以上流動食が注入されることはなく、途方に暮れた妻が「ごめんなさい」とギブアップ宣言が発された。これは結構深刻な問題である。なにしろ、詰まりが解消されない限り、俺は栄養を吸収できないのだ。幸いに水分はチューブを通過した。妻は救急病院や訪問看護士に電話を掛けて翌日以降の対策を立て始めた。

今日は長女が通う高校の卒業式がある。本来であれば妻が卒業式に出席して、その帰りに長女と妻の二人で外食するはずだった。非情にも妻はその予定をキャンセルして、かかりつけの訪問看護士に依頼して午前中に胃瘻の交換をすることを選択する。妻の代わりに三兄弟が卒業式に出席することになった。

訪問看護士の方は非常事態ということで他の予定を差し替えて来てくれた。本当に頼りになるし、「ありがたいなあ」と思う。交換した胃瘻の古い方を分析してみると、詰まりの原因がわかった。それは野菜に紛れ込んだ骨の欠片が斜めにチューブの中にへばりついていたからだ。かくして、胃瘻問題は一件落着となった。俺はじっとしているだけだったが、妻を始めとする家族があたふたする出来事だった。骨の欠片は誰かの象徴かもしれない。

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