教授冥利
昨日、KKT博士が夫人と一人息子を同伴して見舞いに来てくれた。ありがたいことである。本人の許可は取れてないのだが、今回は特別に会話の一部を公開させてもらう。
KKT博士はかつての指導学生で、俺が学位を出した七人の博士の中の四番目だ。彼は釜山大学物理学科出身で、同学科の修士過程に所属していたのだが、数学科の講義を受講するうちに数学に傾倒していき、ついには物理学科を退学して浪人生活を送った後に数学科の修士過程に入学して来た。彼は規格外に優秀で、「下手に指導するより自由にやらせる方が伸びるかな」と思い放任主義を貫いた。それは諸刃の剣で、興味の赴くままに研究分野を変え数学の幅を広げた反面、論文執筆に関して無頓着な面があり、そのことが長期に渡る「研究費や契約職はあっても定職につけない」状態に陥っていた。ここで韓国の大学事情について言及しておく。出生率0.75に象徴されるように少子化が加速する韓国社会における大学は統廃合を余儀なくされ、教員数も減少の一途を辿っている。そんなレッドオーシャンの中で博士たちはしのぎを削っているのだ。
恒例の「近況を教えてくれ」と尋ねると、彼は待ってましたという表情で「実は先週の金曜日に某所の空軍士官学校に採用されることが決まりました!」と答えた。同時に台所で夫人と話していた妻の歓声が上がった。二番目の指導学生だったKKJ博士と三番目のRS博士の時と同様にかつての弟子が大学で定職を得ることほど嬉しいことはない。俺は「放任主義が成功したな」と入力すると、彼は「二年半前に息子が産まれて父親としての自覚が芽生え、論文を書くようになり、面接の準備にも力を入れるようになった」と言っていた。その間、美容院経営の傍ら内助の功で彼の研究活動を支えた夫人の力もあったはずだ。
妻は専門店で買って来た肉を用いてのブルコギで客人をもてなした。食事が終わると彼らは金海の自宅に帰っていった。言い忘れたことがあるからここに書いておく。「就職、おめでとう。しばらくは講義の準備や研究費申請や単身赴任に伴う移動の増加で忙しい日々が続くだろう。それもこれもレッドオーシャンで夢破れた者たちの心情を思えば乗り越えられるはずだ。規格外の学生だった君には数学界を揺るがすような規格外の研究成果を期待している。それから、いつの日か指導学生と家族を伴ってMT(メンバーシップトレーニング)に行ってくれ。海や渓谷で俺が感じたことを追体験してほしいんだ」
追伸)良いことは重なるもので、五番目のPJR博士から「GISTの講義専門講師に採用された」という電話が入った。8月に見舞いに来るそうなので詳細はそのときに記そうと思う。
追追伸)一番目のKHG博士と久しく会ってない。実家は釜山なのだから帰省した際にはウチにも立ち寄ってほしい。
I am so happy to hear good news for prof.KKT and prof.PJR! 😃 They did a great job! I want to show a deep respect to them. Congratulations!
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