韓国の入試制度

 6月21日に韓国の釜山で痛ましい事件が起きた。3名の女子高校生が飛び降り自殺した。見つかった遺書には学業のストレスと進路への不安が綴られていた。高三の娘を持つ親としては他人事とは思えない事件だ。実際、長女が泣きながら高校の課題の多さを妻に訴えたことがあった。そのときは妻が「そんな事を気にするのはおかしい」みたいなことを言って長女の怒りの炎に油を注いでいた。長女の訴えは韓国の受験制度を知らないと理解できないと思うので、以下で簡単に説明しておく。

日本のテレビでもよく出てくるのが韓国の修学能力試験 (スヌンと呼ばれる) 当日の光景だ。それは日本の共通テストに該当する一発勝負の試験で、その成否で合格可能な大学と学科が決まると思われがちだが、話はそう単純ではない。韓国には正規入試、随時入試、論述の3つの選考がある。正規入試は高校の内申書とは無関係の選考で、スヌンのみの成績で合否が決定される。随時入試は高校の内申書と成績に依存するが、大学ごとにスヌンの最低基準点が設定されている。論述は大学ごとに出題する記述型の試験を課して内申書との総合点で合否が決まる。3つの選考の定員は大学ごとに異なるが、人気が高い大学ほど正規入試の割合が増える傾向がある。日本の入試制度と大きく異なるのが推薦入試とも言える随時入試の割合の高さで、全大学の平均が約75%らしい。この制度は「高校での成績が重要」「高校の授業を疎かにできない」「高校教師の権威と権力の増大」を意味しており、このことは講受験科目に偏りがちな高校教育を是正する効果がある一方で、スヌンの勉強に集中したい生徒には不必要な負担を強いることを意味する。

長女は高二の秋に正規入試一本で受験に臨むことを宣言した。長女の訴えの詳細は「スヌンまで半年を切っている時期にグループ評価という一人がサボったら友達に迷惑がかかるような評価方法はおかしい。他の高校ではもっとテキトーにやってるのに」というものだ。

飛び降り自殺のニュースの後、妻は「私らの時代とは完全に違う。ストレスを受けている生徒たちが可哀想」と長女が置かれている状況に対する不満に理解を示した。

「お前の考えはどうなんだ?」という声が聞こえて来ないだろうが、もし来たら「俺はいつだって長女の味方だ」と答えることにしている。


コメント

  1. 長女がんばれー。そして頑張りすぎるな。家族は長女のサポートを。自分で納得いくことができればそれでいいですよね

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