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海外放浪記 17)

これまでの海外旅行や海外出張を古い順に並べてみた。なお、前回は次の通り。 https://hirasakajuku.blogspot.com/2025/11/16.html 17)米国、ニューヨーク。2004年8月末。POSTECH開催されるはずだった代数的組み合せ論に関する国際会議が急遽釜山大学に変更になった。その理由は物理か何かの国際会議が重なって宿泊施設が確保できないからだとSSY教授からの説明があった。続けて日程は変更できないが韓国国内であれば場所は変更できると兄弟子であり米国で世話になったSSY教授から頼まれたら「釜山大学でやりましょう」という言葉が自然と出てきた。その準備を現地世話役として担うことになった。宿舎の予約、朝食の手配、空港からの送迎、プログラムの作成、会場の確保、現地情報をまとめたパンフレットの作成、CJR教授やBSJ博士やアルバイトの学生たちの手助けはあったからこそ乗り切れたと思う。 6月に次男が産まれ、7月に件の国際会議が開催され、8月は妻子と共に帰省してのんびり過ごそうと思っていた矢先に一通のメールが来た。送り主はZiv、イスラエル滞在時に知り合った友人で、メールには「9月某日にニューヨークで結婚式を挙げる」と記されていた。韓国の学期は9月1日に始まる。私用で休講にはできないが、祝福してやりたい。そんな気持ちが入り混じって、贈り物を携えて8月末に会いに行くことにした。Zivとは数回会っただけだし、メールのやりとりも年に1回くらいだ。わざわざ会いに行くほど親しくはなかった。ただ、何者でもなかった自分を知っているZivに「俺は結婚して定職に就いて子供も二人できて仕事も板についてきた自分を見てくれ」と同じく上昇気流の中にいるZivと張り合いたいと思ったのだ。であるが故のニューヨーク行きだった。 Zivはニューヨーク市郊外のホーボーケンという町のアパートに婚約者と住んでいた。ニューヨークの国際空港から電車とバスを乗り継いでホーボーケンに到着した。Zivのアパートに居候することは事前に決まっていた。俺は韓国で購入した漆塗りの40cm四方の箱を渡した。Zivの婚約者は思慮深く理知的で、職業が医者だと聞いて大いに納得した。二人並ぶと、絵に描いたような美男美女カップルで、しかもヤンチャ坊主で行動が先に出るZivを御している構図が垣間見えた。次の日は二人...

高市有事

 高市総理の一日の睡眠時間は2時間から4時間だと報道されていた。「俺と同じだ」という冗談はさておき、普段からそうであれば問題ないのだが、総理の激務で睡眠時間が削られているのであれば可哀想だし、国を預かる者としての健康状態が心配になる。 国会の答弁は、官僚が当たり障りのない、時には玉虫色で意味不明の、文章を作成してくれるのだろうが、その内容や背景を理解して国民にわかりやすく伝えるのは政治家の役割だ。テレビ中継されている国会での議論に万全を期して臨みたいだろうし、初の女性総理という責任や重圧が「働いて、働いて、働いて」と言わせるのも理解できる。しかし、自衛隊の最高司令官であり、全閣僚に指示を出し、国民にメッセージを発する立場の総理大臣が国会答弁に時間を費やし、心身が削られるのはいかがなものかと疑問を感じるようになった。 台湾有事に関する質疑の際に高市総理はそれまでの政府見解から踏み込んだ答弁をしたらしい。その答弁に中国政府は怒り心頭で、日本への渡航の自粛などの手段を用いて圧力と揺さぶりをかけている。国際情勢に疎い俺は「他国の言及にそれほどの敵意を示す中国政府って何なの?」という疑問が消えることがないのだが、30年前ならいざ知らず、今や米国にライバル視されるほど経済にも軍事的にも成長した中国に敵視されるのは空恐ろしいものを感じる。例えば、尖閣諸島が占領されたら日本は奪い返す武力を有してないし、武力衝突上等の世論さえ形成されないだろうし、頼みの米国も血を流そうとしない同盟国を血を流して助けようとはしないだろう。 言葉一つで国際問題に発展しかねない、しかも質問者の煽りに即答しなければならない国会答弁に総理大臣が出席する必要性はあるのだろうか?官房長官や関係閣僚が答弁を行い、総理が国会終了時に修正または総括を行えばいいし、その方が外交や内政に注力できると思う。

海外放浪記 16)

 これまでの海外旅行や海外出張を古い順に並べてみた。なお、前回は次の通り。 https://hirasakajuku.blogspot.com/2025/11/15.html 16)スロベニア、ブレッド。2003年7月。釜山大学数学科に赴任して二年目の夏、研究費も当てて指導学生を金銭面で補助できるようになり、風呂とトイレがついているアパートに引っ越しして、生活にも余裕が出てきた。そんな折りにスロべニアで専攻分野である組み合わせ論に関する大規模な研究集会が開催されるという知らせが来た。俺の師匠も共同研究者仲間も参加するらしい。俺も参加したいし、そのつもりだったが、ある気がかりがあった。それは一歳になったばかりの長男と第二子を身籠っている妻を残して10日間の海外出張に行ってもいいのかということだ。浦項にある妻の実家は義父母と二人の義妹の四人暮らしで妻子が厄介になると手狭になる。この辺りの記憶が曖昧なのだが、母が韓国に遊びに来てソウルにある義姉の家に母と妻子がお世話になって、ソウルー長崎間の空路があるから母が妻子を連れて大村の実家に帰ったような気がする。とにかく、俺が海外出張に行っている間、妻子は大村の実家で過ごすことになった。 この辺りの記憶も曖昧なのだが、ソウルからフランクフルトまで空路で、そこで乗り継いでスロベニアの首都に降り立ち、そこからバスでブレッドに向かった。ブレッドは湖畔に面した保養地だった。日本からの参加者が多く、海外特有の「盗難に遭ったらどうしよう?」という不安は感じなかった。ホテルの朝食はビュッフェ形式で、最初は物珍しさから腹一杯になるまで様々な食材を味見していたが、後半はトーストとコーヒーのような質素な食事に落ち着いた。発表と研究打ち合わせを終え、充実した気分でブレッドを後にした。実は飛行機の時間が合わず、首都リュブリアナで一泊することになっていた。俺は予約していたユースホステルに泊まり、フットサルに興じた。 その当時はスマホがなかったし、俺は携帯電話さえ持っていなかった。加えて、国際電話は高価で、国際電話用のカードを購入して、それに記載されている暗証番号を公衆電話で打ち込んで通話していた。俺が妻の携帯に電話して「明日、飛行機に乗るから明後日に会えるよ」と伝えた。その前の連絡で妻子は浦項にいると聞いていた。妻は電話口で「爆発寸前だった」と言っ...

海外放浪記 15)

 これまでの海外旅行や海外出張を古い順に並べてみた。なお、前回は次の通り。 https://hirasakajuku.blogspot.com/2025/07/14.html 15)台湾、台北と高雄。2002年12月末。台湾での半年の滞在を終えて韓国での生活が始まったとき、親戚等の集まりで台湾の暮らしが話題になると「寝ている時にヤモリが天井から落ちてきた」「風呂場にヒルが出てきた」「雨季は洗濯物が全く乾かない」「バイクに乗っている人がやたら多くて粉塵がすごい」などと幸福に満ちた新婚生活をカモフラージュするために、あえて台湾での苦労話を中心に話していた。それを聞いた人は「そんな国でよく暮らせたなあ」という印象を抱いたかもしれないが、俺と妻は「あばたもえくぼ」の諺そのままにそんな苦労話も愛しい記憶として語っていた。 同年5月には第一子である長男が産まれた。台湾は妊婦に優しい国で身重の妻がバスや電車に乗ると必ずと言っていいほど席を譲ってくれる人がいたし、台湾の友人たちも最大限の配慮をもって妻に接していた。俺は新しい職場で多忙であったが、台湾でお世話になった人々に会ってお礼を言いたいという気持ちは募るばかりで、台湾訪問の機会を虎視眈々と狙っていた。乳飲み子を飛行機に乗せて海外旅行していいのかという疑問もあったが、妻の担当医から「全然大丈夫」と言われて妻もその気になった。 俺と妻と長男で飛行機に乗るのは初めてだ。台北では友人が予約してくれたホテルに泊まり、結婚式を挙げた友人夫婦を祝福し、一年前に住んでいたアパートを訪ね、H教授夫妻とC教授夫妻それぞれの自宅にお邪魔して、長男の記憶には残ることはないと思いつつも動物園に行って過ごした。そこから電車で高雄に向かい、友人兄妹の実家でご馳走に預かり、楽しい時間を過ごした。当時の写真を見ると、浮かれた俺の様子が見て取れる。 残念ながら、それ以降に台湾に行ってないし、持病のためにこれからも行くことはないだろう。しかし、妻子は別だ。いつの日か家族旅行で台湾に行って思い出を伝承してほしいと切に願う。

学科長日誌 12)

 俺の研究室の本棚には「学問の発見」という書名の本が四冊置いてある。一つは日本語、残りは韓国語で書かれていて、日本人の来客や進路相談に訪れる韓国人学生に貸し出していた。その本は著者の幼少期からアメリカ留学時代を経て研究者としての地位を確立するまでの経験や感想が記されていて、面白いだけでなく研究者への浪漫が掻き立てられるのだ。 実はその著者はソウルに滞在していた。俺は「これは千載一偶の機会だ。俺が学科長でいる時になんとかして釜山大学での講演会を実現させたい」と思った。俺は滞在先のソウル大学に電話を掛け講演依頼を本人に伝えてくれと頼んだ。すると、「そういうことは秘書に尋ねてくれ」と言われ、秘書の連絡先を教えてくれた。秘書は韓国人の女性で、俺が講演依頼の件を伝えると、「先生は多忙だから他校での講演依頼は断るようにしている」と言われた。話を聞いていると、彼女はスケジュール管理だけでなく生活の世話もしているとのことがわかった。「なるほど、釜山大学での講演を認めると、他の大学から講演依頼が来た時に断る大義名分をなくしてしまうことになるのか。あなたの立場も十分に理解できるなあ」と言いながら、電話を切られないようにして、「今度、ソウルに行く用事があるから会ってもらえないだろうか?先生の迷惑にならない講演の形態について教えてほしい」と申し出て、ついには会う約束を取り付けた。その会合が俺が信用できる人物で制御できそうか評価する場であることは重々承知していた。秘書の方は20代前半で気さくで「緊張して損した」と思うほど話が弾み、先生との面会の約束を取り付けた。 後日、釜山大学数学科に研究員として滞在中のSTY博士を誘ってソウルで先生、秘書、STY博士、俺の4人の会食を開いた。その先生は広中平祐教授で、言わずと知れた数学界最高の栄誉とされるフィールズ賞受賞者だ。テレビでしか見たことがない伝説的な人物が目の前で動いている。俺は興奮と感動でパニック寸前の状態だった。その会食で講演会の日程を調整した。広中先生は気さくで、著作に出てくるそのまんまの人柄だった。あれだけ名声があるのに尊大な感じが全くないのは俺の師匠と同じだと思った。 講演会場は大学本部の500人収容の大会議室だ。新たな不安に襲われた。それは「もし聴衆が少なくてガラガラだったらどうしよう」ということだ。俺は近隣の高校に講演会のポ...

昨日、今日、明日

昨日、散髪と洗髪をしてもらった。妻にとっては重労働だと思っていたが、話を聞いているとそうでもないようだ。絵が好きだった妻は美大進学を夢見るも家庭の事情で断念した過去がある。妻は手先が器用で、料理や裁縫 にその才能を発揮していたが、どうやら俺の髪を整えることも妻の芸術活動の一環らしい。妻は「バリカンの使い方がわかった」と言って、あ仰向けに寝かされた俺の頭をリズミカルに刈っていく。完成した髪型をスマホを鏡代わりにして見せてくれたが、悪くはない。 今日の午前10時から12時まで停電するという通知があった。実際に電気が止まったのは10時30分で、テレビの画面が突然真っ黒になって、デジタル置き時計の文字盤が消えた。つば吸引器も動かなくなり、口の中につばが溜まり続けた。人工呼吸器はバッテリー機能があるが、カフアシストは動かない。インターネットも使えないし、パソコンも使えない。正確に言うと、視線入力に必要な器機の電力が得られない。俺の生活は電力に大きく依存している。人工呼吸器のバッテリーは7時間持つらしい。今回の停電は検査のためで、短時間で終わったから、生命の安全は保障された。しかし、原因不明の停電や災害時の長時間の停電が起こったら、救急車を呼んで電気がある場所に移動することになる。安価な発電機を購入することを検討した方がいいかもしれない。 明日は韓国の大学修学能力試験(通称、スヌン)が実施される日だ。日本でも報道されているように韓国の受験生にとって特別な日である。日本の共通テストが7教科の試験を二日で行うのに対し韓国のスヌンは5教科の試験を一日で行う。日本のように共通テストの一ヶ月後に二次試験があるわけではないので、文字通りの一発勝負だ。 韓国の受験生にのしかかる重圧は相当のものだろうなと想像する。先週、高三の長女が「試験当日に腹痛防止の薬を飲んだ方がいいか、飲まない方がいいのか?」と聞いてきた。俺は「わからない」と答えたが、長女だけでなく韓国の受験生が「当日、体調不良で実力を発揮できなくなったらどうしよう」という不安を抱えていることが伺い知れた。毎年、11月中旬の木曜日にスヌンは実施される。決戦は木曜日なのだ。

芸能スポーツ生活アラカルト

先週末から今日まで起こった出来事を書き出してみる。 先週の土曜日に鹿島アントラーズ対横浜FCの試合があって、鹿島が2対1で勝利した。残りのの2試合で連勝すれば、鹿島の9年ぶりの優勝が決まる。中継を見たかったなあ。VPNとDZONに加入すれば視聴できると生成AIが教えてくれた。 J2ではJ1への昇格争いが佳境を迎えている。現在の順位で順当に行くと、水戸と長崎が昇格する。地元の長崎は新スタジアムが弾みになったようだ。水戸は初昇格の重圧を跳ね返すことができるのか? 大相撲九州場所の初日の中継を視聴した。長崎県出身の平戸海は隆の勝に立ち合いでやや押されたが、そこから押し返して寄り切るという見事な相撲で白星を挙げた。「将来、強くなりそう」という期待を抱かせる相撲心を揺さぶる。 NHKのスポーツニュースでBリーグが報道されていた。現時点で首位に立つのはヴェルカ長崎らしい。地元にそんな強いチームがあることもBリーグが人気を博していることも知らなかった。 Netflix 配信のドラマ「ザロイヤルファミリー」が面白い。競馬の馬主を演じる佐藤浩市とその秘書を演じる妻夫木聡の掛け合いを見るだけで楽しい。二人の演技は際立っているし、円熟味を感じる。 愛知県常滑町にオープンした「うお一番」という魚屋が気になる。料亭や回ってない寿司屋に卸される新鮮な高級魚を適正価格で売る店らしい。健康であれば今すぐ行きたいくらいだ。 今日は訪問看護のSUJさんが来てくれて、カニューレを交換してもらった。2週ごとに訪問看護サービスを受けているが、妻も俺も心の拠り所としている頼もしい存在だ。 Netflix 配信のドラマ「Miss King」が面白いとは言えない微妙な出来だ。母を捨てた父に復讐するために将棋の棋士を目指す話だが、原作が悪いせいで将棋ファンにも一般層にもアピールできてないと思う。主演ののが目当てなのと将棋界の発展のために最後まで視聴することになりそうだ。